All About Ben Whishaw :イギリスの俳優ベン・ウィショーのインタビュー記事の訳、舞台や映画のレビュー、写真等、ベンに関する情報やおしゃべり・・・
by uraracat
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カテゴリ:ベスト10インタビュー 翻訳( 11 )

"Radio Times" ベン・ウィショー Richard Ⅱインタビュー訳

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The RadioTimes Interview by Zoe Williams
I AM THE KING

ベン・ウィショー、ジェレミー・アイアンズ、トム・ヒドルストン ― スターたちの銀河がシェイクスピアの4つの歴史劇に新しい命を吹き込む

The Hollow Crown : Richard II Saturday 9.00pm BBC2

一人の俳優にとって、23歳という若さでハムレットを演じ、名を成すということは特別なことである。デンマーク王子の頭の中で起きていることの半分を理解できたとしてもその時にはすでに大概、彼を演じるには歳をとりすぎていると悟る。2004年にベン・ウィショーが前面に打って出たとき、新しいことに飢えた世界にとって、彼は明らかにハンサムなニューフェイスを超えた何者かであった。当時、批評家は、彼を節くれだった木の根っこと形容し、彼のボディ・ランゲージは、不確実性がねじれ、畳み込まれ、ある意味身体的に不可能かと思える方法で、彼自身の中に戻りながら成長しているかのように見えた。

1950年代を舞台にしたBBC2の佳作ドラマ The Hour をみて私が描写するならば、
彼は常に忙しく、率直で、シニカルながらもクロスワードパズルに熱心な若者を演じた。
ウィショーは、あれほど別人に見えることがあろうか、どうみても、誰もあの二つの異なるキャラクターを演じ分けることはできまいと思うほどであったのだ。
彼はどこかゲイリー・オールドマンのようなところがあり、これが同じ人物かと思うほど、どの役を演じても自分自身を消し去るのだ。


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実生活では現在31歳。今はハムレットよりもフレディ・ライアンの方に傾倒している。
無愛想というわけではないが、背を丸め、可能な限り場所をとらないようにしているように見える。誰もが自分をひけらかす場である、BAFTAのバーでは場違いな感じさえする。
BBC2 の歴史ドラマ、The Hollow Crown というシリーズ中、4つのシェイクスピア歴史劇の最初の Richard Ⅱについての取材でここに来ている。他にこのシリーズには、ヘンリー四世にジェレミー・アイアンズ、ヘンリー五世にトム・ヒドルストン、ジュリー・ウォルターズとサイモン・ラッセル・ビールも出演する。


                       ~ * ~
誰もがシェイクスピアが難しくて自分とはかけ離れた世界だと思わされていることにイライラします
                       ~ * ~

リチャードは、間違いを犯し、およそ悲惨で、王らしからぬことの全てを引き起こす不機嫌な王である。ウィショーは、拙く、未熟で、飼っているカプチン猿(猿自体はナイスでスウィートな演技)に餌を与えるために友人の人生を台なしにする男を演じる。
しかし同時に、王は荘厳なる振る舞いも兼ね備えており、彼の演技は、権威と軽薄の間での綱渡りである。それは、相容れがたい、磁石の両極のようでさえある。


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今回のドラマについて、そして2時間に収められたお堅いシェイクスピアに我々が着いていけるかどうかを訊ねると、痛烈な答えが返ってきた。

「テレビでシェイクスピアがあまり放映されなくなったのは、本当につい最近じゃないですか?そうやって誰もが難しくして、自分とかけ離れていると思わされていることに腹立たしさを感じます。それが本当にいやです。人は堅苦しいと感じていますが、実はとても簡単なことなのです。自分に引きつけて解釈すればいいのです。みんながもっとリラックスして観てくれればと思います。」

彼の役柄について訊ねると、椅子の中でもぞもぞと居住まいを正す。彼自身のことを話すのは本当にご法度だと感じた。ある意味電気ショックを与えたようにさえ思えた。
しかし逆にどんな質問を投げかけても、その機をとらえて必ず相手に訊き返すことを忘れない。それが、彼にしか答えられないどんなに特化した内容だとしても・・・・・

とにかく「リチャード二世」の話に戻ろう。


「ある意味、彼にとても共感しています、と言ってもこれは誰とでも共有できる見方ではありませんが。彼の、遍歴(Journey)・・・が好きです。とても興味深いものです。自分の傷つきやすさというものに直面せざるを得ない人物で、恐怖心を受け入れ、自分自身についての幻影は打ち砕かれます。そこが好きなのです。」

またちょっともぞもぞし、ナプキンを小さくちぎり始めた。

彼はまさに私に、バイオリンを弾いているときしかリラックスできない天才少女が出てくるおとぎ話を思い出させた。彼も舞台でしかリラックスできないタイプの俳優なのだろうか。

「演技している時、本当に生きていると感じます。リラックスする必要はありませんが、とても生を感じて開放されます。ある意味、実人生での人間関係よりも、舞台での他の役者との絡みの方が楽です。言っている意味、解ります?」

えー、あまり。


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彼がブレークしたのは、画期的な役ではあった。RADA(王立演劇アカデミー)を経て、とても考え抜かれたインディーズ映画(2001年に My Brother Tomで最初の受賞)出演と、役者への道は極めて伝統的だった。学生時代には、このような王道を歩くことになろうとは、予想だにしなかったと言う。

「絶対に、確かに、本当に、ありませんでした。全く。ただ学校にいるのが好きでした。経験することが好きでした。そういう風に感じたことは全くありません。多分誰もないのでは?僕たちの学年には、本当にすごい奴や、ビッグな奴がたくさんいましたし、そんなことを考えても無駄で、とにかく興味もありませんでした。
これがあの当時のぼくの印象で、ぼくはとても小さな役ばかり演じていました。」


彼の今までのほとんどの仕事が主役だったにも関わらず、いわゆるロマンティックな主人公ではないのは明白である。(いつもの私のように)口に出したわけではないが、「ちょっとファニーなルックス」と言えるのか。彼の履歴には、爆発やタイのキックボクシングをやる女性が出てくるような安っぽいプロジェクトはない。(経歴という意味でいうのだが、彼とジェイソン・ステイサムは対極を成す。両方が共存するということはない。)しかし、彼は特に好き嫌いはないと明言する。


                       ~ * ~
Radio Times の読者は、死というものに興味を持つと思いますか?
                       ~ * ~


「くる仕事、くる仕事をそんなに断っているつもりはないのです。ただ、いい仕事は選びたい。人は自分がベストを尽くせると思える仕事をするべきだと思うのです。だからといって、小難しいインテリにはなりたくないし、お高くとまった堅物のつもりもないのですが。」

そう、そして、話が彼の短所について及んだ時、彼はもう一つ、はっきりさせたそうであった。(特に私が持ちかけたわけではないが)-ひどく他人を決めつける傾向があるとのこと。

「ひどいんです。いつも違っています。誰かと初めて出遭うとき、先入観を持たないように心がけています。ただその人のあるがままを受け入れるように努めています。」

何かを判断することを故意に保留する、こう決めておくことは難しくありませんか?


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ちょっと考えてから…..

「それは、死が冷たくて、硬くて、きつくて、生が開放的なのと似ています。だから生きているなら、そのゆったりさ、ゆるさ、自由さを謳歌して、ものごとと結びつくべきです。遮断する方に向かったり、判断しようとしたり、確実なこととして決めつけてしまうのは、死に向かって何かを選ぶことに似てしまうのです。

ぼくは、ある牧師さんとこの壮大な会話をしました。彼は『不確実のままでいいのです』と言いました。懺悔したわけではありませんよ。ぼくは全く宗教的ではありませんから。なんでこんなことをあなたに話しているんでしょう?

我々は確実性というものがこの世の至高であるかのような価値感を持っています。

それはものごとをぞっとするような方向にも向けてしまう可能性があるのです。でも、それなしには、我々は何もできないのも事実です。だから、どうやって確実性というものを通り超して自分の道を見つけるかです。」



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長い沈黙があった。

「あなたは、Radio Times の読者がこんな死の話に興味を示すと思いますか?」

示さない理由も見当たらない。

こういう部分が彼を説得力のある役者として成り立たせているのだと確信した。生まれついての内向的性格で、役柄のために完全に自分の中に入り込む。だが、いざその役柄を演じると -文字どおりにしろ、比喩的にしろ- そのことがステージで注目を一身に集めることになる。


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「ぼくは多分、内向的と外交的の半分くらいのところにいるのではないかと思います」

と始める。

私はとても懐疑的な顔になった。

「内に向かう傾向はあります。見られたくないという強いものもありますが、また同時にそのままでは自分自身でどうすることもできない状態でもあるのです」

どなたかの畏れ多い先入観があったおかげで、彼はあるすごい映画に出ることになった(契約上の理由で内容についてはほとんど話すことができないが)。デヴィッド・ミッチェルの素晴らしい小説 Cloud Atlas の映画に出演する。あの小説が映画になるのをどうしても想像できない。でも同様に、あれがどうやって小説になったかを訊かれても、想像することはできそうにない。

そして、ダニエル・クレイグがボンドを演る Skyfall での "Q" 役だ(10月公開)

興味深いことに、ベン・ウィショーは、社交上は、かなりセンシティブで、自分が偏屈だと思われるのも嫌っている。自身のことを語るのを嫌い、とても居心地が悪そうである(私だけでなく-他のだれが取材してもそうだというのは誓ってもいい)。だが、批評についてはとても楽観的である。決してレビューを読まず、批評家の言葉も気にしていないと語る。私は、彼の母親がとてもいいことを書いてあると言って送ってきたりはしないのだろうかと問うてみた。すると、 言った。

「母は、それが許されてないのを知っています」

ロサンゼルスにドラマのパイロット版を撮りに行っていたが、シリーズ化はされなかった。それは、プロジェクト自体が面白そうだったからで、アメリカに渡ることで、役者としての知名度を上げたいという地位確立のためではない。

「誰もが、他人があなたについてどう思っているかを考えます。彼らは真剣に考えることもあれば、そうでないこともあります。あなた自身がそれをコントロールすることはできません」

多分、彼はただ 真にいい役者なのだ。この瞬間、彼を全く信用できると思えた。相手が誰であろうと、その気分を害することを嫌う、しかし、自分の気分を害する人にはそれとなく注意を促す。彼はそういう人物。

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「正直に言うと、ぼくは仕事することに ただただスリルを感じたいだけなんです」



(了)


Translated by uraracat
(Originally posted June 28, 2012 / completed on July 7, 2012)

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by uraracat | 2012-07-07 09:48 | ベスト10インタビュー 翻訳 | Trackback | Comments(5)

NEWS Scotsman のインタビュー記事  ベン・ウィショー 

Interview: Ben Whishaw - Star quality
Published Date: 04 November 2009

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ベン・ウィショーは、繊細な芸術家タイプの役柄を求めるフィルムメーカーにとって、願ってもない役者になったと言っていいだろう。2006年に殺人をものともしない内向的な調香師ジャン-バティスト・グルヌイユ - 言うなれば自分のミューズたちを殺すアーティストであるその役を、パトリック・ジュースキント原作の小説『香水』をトム・ティクヴァが監督した大望の映画化作品『パフューム:ある人殺しの物語』で演じてスターとなった。

その後、トッド・ヘインズ監督の『アイム・ノット・ゼア』でボブ・ディランの人生の詩人的な側面を演じ、現在、この役者の壊れそうなもろさに触発されたジェイン・カンピオン監督に抜擢されて、『ブライト・スター』で、19世紀の詩人ジョン・キーツを演じている。 
"Fragile"(壊れそう)と "vulnerable"(傷つきやすい)の二語がウィショーをいい表わす周りの人の見方だ。 ソフトな語り口、スレンダーな肢体、思慮深くて繊細。

だが、最近彼は
「自分が演じてきた役柄にはある類似性がある」と感じ出しているという。彼はやってくる役に「スリルを感じていた」が、「どこかで、違ったタイプの経験もしてみなくてはと思い始めました」

「年齢のせいも少しあるかもしれません」と、29歳になったばかりの先日会ったときに、こう結んだ。「変わり目にあるのだと思います。だから、ただ若くてセンシティブとか、みんながぼくに対して抱いている印象がどのようなものであろうと、それとは違ったものをテーブルに持って来なければいけない、と感じているのです。30歳を前にぼくには今まで以上のものが必要だと」

 
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ウィショーは、そのミステリアスな<今まで以上のもの>が何なのか、そしてそれをどう表現するのかはまだわかっていない。しかし、何かがあるとは感じていて、

「何が起きるかとても楽しみです。一人の役者として、自分には自分しかなく、ものごとを感じる感じ方も自分の感じ方であり、ものの見方も自分の見方しかないのです。そして、それが進化し変容するに従って、いや応なく、演技と自分の関係や、やりたい役柄の性質も変ってくるのです」

と語る。
 
どのような進展があるかはわからないながらも、彼から目が離せない。これはウィショーについて本当に聞き飽きたフレーズかもしれないが、彼がイギリスの同世代の俳優の中で最もエキサイティングで才能のある役者だということに、全くの誇張はない。 



比較的短期間のうちに、彼は役者なら誰でも夢見る人々の注目を集めてきた。2004年にOld Vic 劇場でトレヴァー・ナンの演出でたったの23歳で『ハムレット』を演じた時(彼はすでに16歳の時2度やったとのことだが)、批評家は彼の演技に卒倒するほど驚いた。 

ナン監督は、傷つけられやすいハムレットを探していて、それに打ってつけ、どんぴしゃの役者としてウィショーを見つけ出した。

「偉大なハムレットたちは、演劇大空間に時としてハレー彗星のように降り立つ」とデイリー・テレグラフ紙は書いた。ウィショーが紛れもないその一人だというわけである。「昨夜、一人のシェイクスピア・スターが誕生した!」と、イブニング・スタンダード紙が同意した。

ある者は、次なるローレンス・オリヴィエと歓迎した - こう絶賛された時、ウィショーはひるんだ - というのは、よく書かれるということは、若い役者たちにとって逆効果になることもあるからだ。若い世代である彼はやはりそのように負担に感じたのだろうか?どうやらそうでもなさそうだ。

「どれも現実とは思いませんでした。たった一日の新聞に書かれただけのことですから」と彼は言う。「僕らはみんな、実際それが何も意味しないことを知っています。現実は、次なるやるべきことを見つけなければならない、だけのことです」
笑って「実際、ハムレットを毎晩やらなければならないわけです。レビューでどう書かれようと、なんであろうと、ただもう、向こう4か月同じ舞台を続けなければならない。夢中でやることしかありません。実際それしか考えられません」
  

 

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『ブライト・スター』で地に足のついたキーツを演じ、ウィショーへの賛辞は今、山と集まっている。

この映画は、この役者の最初の恋愛映画となり、キーツとハムステッド・ヒースの隣り部屋に住む若い仕立て屋のファニー・ブローン(オーストラリアの女優、アビー・コーニッシュが魅力的に演じる)との愛の全盛期を描いている。悲しくも、ほぼ全員が結核で亡くなる家系の最後の一人であったキーツも、25歳でローマにおいて早逝し、ファニーとの恋愛に終止符が打たれた。


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詩が好きではあったが、ウィショーは『ブライト・スター』をやる前にはキーツについて何も知らなかった。事実、ロマン派のファンではなかった。

「ちょっと偏見がありました」と彼は言う。

私たちはハムステッド・ヒースのキーツ・ハウスで、キーツの友人だったチャールズ・ブラウン(ポール・シュナイダー演じる)の薄暗い寝室の隅に座っていましたので、私はちょっと罰当たりではないかとびくびくしました。

「とにかく言葉がたくさんあり過ぎると思っていました」とウィショーは続ける

「甘すぎて、リッチで、贅沢。テッド・ヒューズとかもっとそっけなく、強いものが好きでした。」


しかし『ナイチンゲールに寄す』などの詩の朗読は、思ってもいなかったほど難しくて誠実さが必要だとわかった。

「飛躍があるのですが、同時にまた地球とつながっているのです」と説明する。 

「それがぼくにとって鍵となる要素です。」


彼が自分自身のキーツ像を描き出せるのは確かであろう。

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キーツの悲劇の一つは、彼の詩の天才が生前には認められなかったことである。事実、批評家からは始終やり込められていた。物書きでは食べていけず、事実上文無しで、19世紀の社会では、理想的な夫になる器とは認められなかった。





d0160581_2052599.jpg逆に、ウィショーはたった15歳の時にエジンバラ・フェスティヴァルで If This is a Man のプリーモ・レーヴィを演じて絶賛され、その後、賞賛は続いている。彼にとって、キーツのフラストレーションを把握するのは難しかったのだろうか?
「ええ。でも、認められないからこそ言える何かもあると思うのです。認められてしまうと、演技の中に突然他のことの負荷がかかってきます。ぼくは、ある意味それに類することを感じました。何かが成功したとします、すると多分、人はまたその同じことをあなたに求めるという風になります、またあるいは、次は何をせねばとか、何をしたらいいとか、というアイデアを描きます。そして、実際、もしそういうことが全くなかったら、ただものごとを創造すればいいという、美しいくらいに自由な状態にいられるわけです。」


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野蛮な批判にもかかわらず、キーツは、

「別世界とも言える自己信念みたいな感覚を持っていたように思います。」

若くして、シェイクスピアの作品群の頂点の一つに取り組むという野望は、ウィショーが自己信念さえも欲していないということを提示している。あるいは、彼はただあの時、何も失うものがないと感じていただけなのか?

「そうですね、ある意味の確信はありました。でも同時に大変な不安もありました。それは誰もがそうだと思いますが。」と笑う。「でも、それは必要なことです。なぜならばそれこそがよりよい仕事をしたいという気持ちを維持させたり、前へ進もうとさせるのです。」

また同時に、彼は何も失わなかった。

「それも本当に重要なことだと思います。それは、自分自身の中の感覚を保つために真に闘わなければならない何かです。」

と同意する。


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『ブライト・スター』でウィショーはまたトップクラスと認められる。しかしながら映画は、『情愛と友情-Brideshead Rivisited』、彼を「本当に入り込んだ」と感じさせた、悲惨な刑務所のテレビドラマ『クリミナル・ジャスティス』などの一連の傾向に終止符を打とうとしている。

芝居することの不思議さは、

「子どもっぽい何かに触れているかどうかです。なぜならそれはすべて信じさせることなのです。」

と彼は言う。

「でも、また現実の世界に生きなければなりません。そしてぼくはこのことがとても厄介だと感じています。映画の中の、恋をしたり、刑務所に入ったり、といった経験は、実際どれも現実ではないからです。
 
演じた後、ぼくは実際に何か真に現実の経験をしなければならないと感じました。」



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これは、彼が、キーツの世界を後にしてからも懐かしんだ、ということを物語る。
キーツが結核で亡くなったことをことさらロマンチックには取り立てないが - ウィショーは人々の絆が互いに真に結びついていた時代に生きられたらと、憧れる。

「当時の人は、こんな小さなテキストメッセージのコミュニケーション・ツールは持っていなかったし、それによって時間を取られることもなかった。そして不必要なら消し去ったり、すぐに他の人のを見たり、Facebook を通じて誰かとつながったりすることもなかった。実際にはずっと会わないで、何ヶ月も経って生身の相手にようやく会うことになる。そして一緒のときを過ごす。

ぼくは、このことが今を生きるぼくらの世界についての警告だと思うのです。今そうやって実際に人と会う時間をつくるために闘うのはとても難しいと言わざるを得ません。」



当分の間、自由な時間がありそうには見えないが、
自分を充電する時間を持ち - それが役者であることの贅沢のひとつ、と彼は言う - またすっかりもとの流れに戻った。

ジュリー・テイモアのシェイクスピア『テンペスト』(ヘレン・ミレンがプロスペラ役)の映画版でアリエルを演じた。それはもう撮り終わり、公開を待つばかり。そしてロンドンのロイヤル・コート劇場における舞台 Cock が控えている。その後、アレクシー・ケイ・キャンベル作のオリヴィエ賞受賞作品 The Pride のオフ・ブロードウェイ上演に、ヒュー・ダンシーとアンドレア・ライズバラと共に出演が決まっている。

特にこれと言った計画はない、とウィショーは言う :
「ただ、いい人たちと一緒にいい仕事がしたいだけです。

演技をするということはかなり茫漠としていると思います。
一日の終わりに、自分の中に漂うもの、自分に与えられたもの、それを感じ取るのです。」


そしてちょっと黙る。

「ぼくは仕事そのものができたこと、あんなにも素晴らしい人々と仕事をすることができたことを、とてもラッキーだと感じています。恵まれていると思います。」


Bright Star is in cinemas from Friday. Cock is at the Royal Court
Theatre, London, 13 November until 19 December


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Source:
http://news.scotsman.com





この記事は、もとは 2011年5月30日 にアップしていたものです。
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by uraracat | 2012-03-23 00:01 | ベスト10インタビュー 翻訳 | Trackback | Comments(1)

Great Interview! "Out"  February 2010

OUT FEBRUARY 2010  Page 60&61
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BLACK SHEER SWEATER BY VERSACE,
BLACK KNIT SILK AND CASHMERE CARDIGAN BY YVES SAINT LAURENT,
NAVY PANTS BY MARC BY MARC JACOBS


Ben Whishaw
MYSTERIOUS SKIN
By GARETH McLEAN
PHOTOGRAPHY BY SIMON EMMETT




Page62
ンドンのロイヤル・コート劇場の
バーで、テーブルに覆いかぶさるベン・ウィショーは森に住む小動物のように見える。

敵を警戒するかのように、彼の鋭い目は他の客を刺すように見渡しながら、バナナをちぎって口に放り込む。体にノミでもいるかのように、椅子の上でそわそわとうごめき、大きすぎるウールのセーターの中で、彼の針金のような身体は、ほとんど溺れているようだ。どうみても、典型的な主役タイプの体格ではない。

しかしながら、23歳の時やった、高名なトレヴァー・ナンの演出による舞台最高峰
ハムレット』 公演に始まる、彼の緻密で繊細、卓越した演技力を次々と見せつけることにより、そのあり得ないと思えることがウィショーにはまさに起こったのだ。

He confirmed his promise in a run of movie roles, including the scent
-obsessed serial killer Grenouille in Tom Tykwer's adaptation of the cult novel Perfume, grizzly rocker Keith Richards in Stoned, and Bob Dylan
(along with Cate Blanchett and Heath Ledger) in Todd Haynes's I'm
Not There
.

After seeing his performance in the 2008 remake of Brideshead
Revisited
, British critic David Thomson hailed him as 'one of Britain's
great actors,'
and his recent turn as the poet John Keats, in Jane
Campion's much-praised Bright Star, put critics in a swoon on both
sides of the Atlantic.


この驚くべき昇格をウィショー自身が誰よりも驚いている。

「カレッジにいた時は、これまでに仕事でやった役を実際やるような日がくるとは夢にも思いませんでした。いつもやせてオタクっぽい役ばかりでしたから。多分、今日、こういう役が主役になる時代なのでしょう。

もし、ぼく自身が役を欲してやりたがったのなら、自分で身体づくりをしたでしょう。今までやったものは、依頼が来てトライしてみたものばかりです。ですが、やはりとてもきつかったです――もっと太い腕になろうと努力しました。でもすぐにジムに行くのは止めました。腕は持ち堪えられませんでした。」


彼の生まれ持ったもろさとあの驚くべき瞳が相まって、見るものを惹きつける。それが彼の魅力の一部であるのだから、増量するというのにはとても違和感がある。

席にじっと座っていることはできないのだが、一旦静止すると、会話を通じての自分の曖昧さや態度を謝る。ウィショーはまた、強烈な静けさも合わせ持っているのだ。

これはある意味、舞台役者としての彼の卓越性を物語る。


彼の役選びもまたかなり野心的である。
『ハムレット』やチェーホフ『かもめ』のコンスタンティン役のような古典的なものもやるが、彼は現代劇においても素晴らしい。

ほとんどの彼の舞台の仕事は一筋縄では行かず、時には猛烈だ。フィリップ・リドリーの終末劇 “Mercury Fur” は、ロンドンの デイリー・テレグラフ紙に「毒のようだ」「悪質で痛烈なキックだ」と酷評された。

似たような役が映画にもある: British Independent Film Award で、“最も期待される新人賞” を獲った“ My Brother Tom “ 、では父親による性的虐待を受け、同じように傷のある少女との歪んだ関係にのめり込んでいく屈折した10代の少年を演じた。

そして、彼が最も興味をそそられてここ最近選んだ舞台の役どころ。
1958年と2008年のゲイの男性のコントラストを描き、ジョー・マンテロが演出する、アレクシー・ケイ・キャンベルの The Pride でオフ・ブロードウェイの初舞台に立つのに先立ち、ウィショーは今、ロンドンのロイヤル・コート劇場において、一人の女性に恋をしたために、ボーイフレンドとの別れ話が持ち上がる Cock という舞台公演の終盤である。

ゲイを演じることは、定評のある(ストレート)俳優にとっては称賛に値する。『ハーヴェイ・ミルク』でオスカーを受賞したショーン・ペンがいい例である一方で、セクシュアリティがインターネット・チャットの源になることは、若い俳優にとって、色々な意味で問題が生じてくる。

もう一つの例としてルパート・エヴェレット。彼はカム・アウトしたことで仕事が減った。もっとも、減ったのは、彼自身の性格も災いした、と言わねばならないが・・・。

ウィショーは私たちに何かを伝えようとしているのだろうか?だとしたら、そうすることは賢いことなのだろうか?


答えはCock の中に明瞭に横たわる。
はたまた、シェイクスピアが、「芝居がそのものだ*」と記したごとく。
Cock はレッテルを貼ることやそれに類することの無意味さについての芝居だ。
まさにそれがウィショーのことそのものとも言える。

「ぼくはCock に本当に引き込まれました。ぼくにとってあれは、いかにぼくたち人間が混沌としていて支離滅裂か、いかにレッテルを貼って人を決めつけることが無意味な努力であるか、レッテルを貼られ人生を侵害されることでいかにフラストレーションが溜まるか、そして、人はどうやって他の人たちと影響し合って生きるかについての戯曲です。もちろんセクシュアリティと性差についての話でもあります、でもぼくはあれはそれ以上のことを言おうとしていると思います―― 世の中のすべてにおいてレッテルを貼ること、服従、不服従についてなど。」




※脚注 * by uraracat

「I'll have grounds More relative than this:
the play 's the thing 
Wherein I'll catch the conscience of the king.」

「ぼくはそれ以上に確かな証拠を手に入れるぞ。
芝居がそれだ。
そのなかで、王の良心を試すのだ。」

"Hamlet" 2.2.626-630
  





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BLACK COTTON T-SHIRT BY AIX ARMANI EXCHANGE.
BLACK AND WHITE KNIT CARDIGAN BY MARC BY MARC JACOBS
.



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彼もレッテルを嫌う一方 - Cock の主人公も、ゲイとかストレートといったレッテルは、「60年代に自分達の親の世代がただ権利を勝ち取るために作り出した産物だ」と宣言する。

セクシュアリティをテーマとする Cock、The Pride とたまたま続けて出演することは、彼が自身のアイデンティティを潜在願望的に論じたいとの示唆なのだろうか。

この二つの劇は、声明を述べることなしの声明となりうるのか?

「潜在的にそれはあるかもしれません。わかりません。これら二つの出演話が同時期にやってきたのは興味深いことです。
もちろん、自分で選んだ役ですから、それ自体が世界に自分というものを表わすということにもなります。そしてこれも無論、ぼくがやる仕事は全てがぼくについてということになります。
しかしながら、自分や事がらについての声明を、人前に立って話して述べるというより、ぼくは自分がする仕事そのものに語らせたいのです。」


これは、まだどこか少年のような風情を残す29歳の男性からの、不誠実なごまかしなのか、それとも心のこもった返答なのか?複雑で痛みを伴うこの問題が物議を醸すであろうことに、彼が気づかないはずはない。
若いゲイの人たちにとってポジティブな在り方の手本というのは重要かどうかと尋ねてみた。彼から曖昧さが消えた。

「全くそう思います。心の中で、それが重要だと感じます。でも、それがどういう方法がいいのか、今はよくわかりません。ぼくは今その方法にたどり着く途上にいて、多分、過渡期なのだと思います。
それは、ぼくが考えるべき何かです。でもぼくにとってそれに相応しい時期というのが重要です。そして、ぼくはまだそこに至っていません。」



しかし、ウィショーがその途上にあるのは感じる。
人生においてステージに立つことは、皮を脱ぎ捨てて、彼自身により深く沈み込む時だ、と話す。

「自分が何者なのかがより確実に実感できるのです、そしてそこに強さというものを感じることができるのです。地に足が着いた確かさというか。」



ということはまた、彼は不当だと感じる面もあるということか。

「セクシュアリティがどうであろうと、何をしようと、役者とてプライバシーや神秘的な部分を守る権利というものがあるはずです。公衆の面前で仕事をする立場だからといって、なぜそれ以上のことが公然と議論される対象になるのかわかりません。ぼくには、なぜ役者たちがセレブに転身するのかが理解できないのです。

これはとても難しい議論です。
だからこの話には持って行きたくなかった。でも同時に、このインタビューがゲイの雑誌であるということはわかっていますし、そのこと自体が葛藤でもあります。」



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CREAM HENLEY BY VERSACE


"I FEEL MORE COMFORTABLE IN MY
SKIN NOW, BUT YOU'RE ALWAYS
PLAYING A CHARACTER. YOU TELL

DIFFERENT VERSIONS OF YOURSELF
TO DIFFERENT PEOPLE
."



Cock の夜の開演時間が近づいてきて、ウィショーはウォーミングアップを始めなければならなくなった。Bucks Fizz というグループの’Making Your Mind Up' という、イギリスで大流行した元気いっぱいの1981年ユーロヴィジョンコンテストの優勝曲を楽屋で踊り回ることから始まる。


そして彼は、初めて演技し始めた頃のことを思い返す。

「子どもの頃、よく扮装して人に見せました。何がぼくを惹きつけたかというと、変装するという要素、姿形を変えて化けるという可能性でした。」

しかし彼は、自分のまんまいることが不快だから変装した、という安っぽい心理学もどきの考え方はしていない。

「必ずしも、俳優が他の人に比べて、自分自身のままでいるのが居心地が悪いと思っているとは考えていません。ぼくは、今は自分のままいることが前に比べて楽になりました、でも人はいつでもある意味役を演じていると思いませんか?違った人には違った自分を見せる。そしてその逆に相手もそうだと思います。こうやって写真撮影している時だって、自分を演じているのです。それは、あなたであってあなたでありません。そうやってぼくたちは生きて行っているのです。」

そういうと、ベン・ウィショーはバーの人混みを抜け、行ってしまった。

はて、とすると、一体ここにいたと思っていた彼は誰だったのだろうか?


MCC Theater's The Pride begins previews on January 27 at New York
City's Lucille Lortel Theatre.



(了)






Source:
www.out.com   (※サイト記事の日付は 3.27.2011 になっています)



前に書いた『OUT』の記事
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by uraracat | 2012-02-29 07:00 | ベスト10インタビュー 翻訳 | Trackback | Comments(6)

" Man of Mystery "  ベン・ウィショー Telegraph インタビュー 

【The Telegraph】 - TV and Radio

Ben Whishaw: Man of Mystery
By Chloe Fox   21  Jun  2008

舞台、映画でのベン・ウィショーの演技は、仕事仲間、批評家、観客の全てを魅了する。彼はハムレットを征服し、連続殺人鬼になりきった。だが、一番演じるのが難しそうな役柄は、彼自身のように見える。

ベン・ウィショーはまだ27歳であるが、すでにイギリスで最も優れた俳優の一人に挙げられるほどの名声を得ている。略歴をみると、古典劇で誰もがやりたがる2つの役 - 
2004年にOld Vic 劇場で『ハムレット』(23歳の時)、2006年にナショナル劇場でチェーホフ『かもめ』のコンスタンティン を演じている - それぞれに役を自分のものにし、驚くほどの注目を集めた。

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「偉大なるハムレットたちは、ときとして劇場の大空間にハレー彗星のように炎とともに降りてくる」The Daily Telegraph 紙のチャールズ・スペンサーはこの針金のように痩せたRADAの卒業生をその一人として評し、またNicholas de Jongh は、「昨夜シェイクスピア・スターが生れた」と、The Evening Standard 紙 でそれに同意した。2年後またも、批評家ティム・ウォーカーをして The Sunday Telegraph 紙で、ウィショーの陰鬱なコンスタンティンを「彼はチェーホフの狂う運命にあるアンチ・ヒーローを役柄として演じたのではない」「彼は彼なのだ」と言わしめた。

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ウィショーは、決して批評を読まないということでも知られている。事実、できる限り彼自身のことを書いている記事は読まないようにしている。とにかくプライバシーを堅く守る。本当の意味での真っ白なキャンバスである。彼自身と彼が演じる役柄の間の関係を他人に詮索されるのが正真正銘いやなようだ。
「そういうことでこの仕事をしているわけではありませんから」と最近のインタビューで答えている。

自身のことと仕事のことを話すのは彼にとってはそんなに簡単なことではない ― 
この取材の日、彼は風邪をひいていた。長くてエレガントな指で黒い髪をたくし上げながら、話の途中で椅子にもたれかかりイライラした様子で申し訳なさそうにため息をつき、何度も何度も謝る。「本当に申し訳ありません。こういうのは得意ではありません」


「その不可知な部分こそが彼を、誰が見てもベンをエキサイティングな俳優とせしめている理由だ」とジュリアン・ジャロルド監督は語る。彼はウィショーが、『情愛と友情 Brideshead Revisited 』でセバスチャン・フライトを演じた時の監督である。「インタビューするのが難しい人であることは想像できます」

舞台も映画もほとんど例外なく、ウィショーの演技はいぶし銀のような輝きであると称される。2006年にパトリック・ジュースキントの小説『香水』を映画化したトム・ティクヴァ監督の『パフューム ある人殺しの物語』で彼は、高度に嗅覚が発達した社会的アウトサイダーで、究極の香水を手に入れるために殺人まで起こす、ジャン‐バティスト・グルヌイユを演じた。映画の最初30分間、ウィショーは全く一言も言葉を発しない。それにもかかわらず、彼から全く目が離せないのである。

今年公開された『アイム・ノット・ゼア』 - トッド・ヘインズ監督の絶賛されたボブ・ディランの人物像を多面的に描いた映画で、ウィショーは、ディランの生涯と仕事における詩人的な側面を演じた。彼の静かな超俗性は、ケイト・ブランシェットやリチャード・ギアなど、他の何人かの名の知れたスターたちの演技の中でもひときわ光っていた。


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「ベンには、ある脆(もろ)さのようなものがあり、そこにインスパイアーされます」と、オスカー受賞歴があるジェーン・カンピオン監督は語る。ウィショーは現在、彼女の演出する映画『ブライト・スター』でジョン・キーツを演じている。この映画は、夭折した19世紀の詩人とファニー・ブローンの3年間のロマンスをもとにしている。

「It's like he's in touch with some other ether ― 彼は、なんというか、別次元のエーテルに触れているかのようなのです」 






d0160581_023259.jpgウィショーがやることにした『クリミナル・ジャスティス』でのベン・クルター役はあらゆる意味で尋常ではなかった。これは、元弁護士であったピーター・モファット(Hawking, Cambridege Spies)が書いたBBCの5話からなる犯罪ドラマで、もうすぐ放映されることになっている。中流家庭の青年が、ある夜ドラッグに手を出してしまい、出会った少女が死体で発見され、とてもダークなプロセスを経て刑務所に入れられたり、司法裁判所に出廷したりする内容のドラマである。今までやってきたものより、かなり痛々しいものであると同時に現代的な分野の役である。 

「信じられないほど力強い本でした」ウィショーは言う。「様々な要素が面白く構成されていました。すばらしくて一気に読んでしまいますが、同時に刑事司法制度の中心の致命的な欠陥を暴露するシリアスな内容でもあります」






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彼にとって、クルターは、特にその本質を掴むのがチャレンジングな役柄だった。「リサーチできるような役柄ではなかったので、とても変な感じでした。オットー(バサースト監督)は、ぼく自身でいなさいと言いました。それは本当に以前には全く演じたことのない役でした」。
役の背後に隠れたものは何もなく、とても生だと感じた。「12週間の撮影中、脚本とぼく自身との間にあまり距離はありませんでした。とにかく神経に障りました」。意識的に全く準備をしなかった。主人公が初めて監禁される体験がウィショー自身にとっても初めてとなるように、刑務所を見学することもしなかった。 

d0160581_0242791.jpg「1~2日、ぼくは本当に、um、本当にずたずたに切り刻まれたと感じた日がありました。一瞬にしてタールと草を体にこすり付けられるリンチのシーン、初めて刑務所に送られて他の入所者たちから嫌らしい敵意と好奇の目で見られるシーン、ヘロインを打たれるシーン、それら全ては、まったく気を抜くことのできないハードな瞬間瞬間でした。主人公ベン・クルターが体験することは、基本的には生き地獄であり、そしてぼく自身も、撮影のその時々にまったくその通りに感じたことでもありました。」




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バサースト監督にとってウィショーは、この役を演じるのにパーフェクトな人物だった。「彼の中に入り込んでしまいなさい。彼の役割は決して小さなものではない。5時間という時間のドラマを引っ張っていく役割なのだ。そして観客が彼から目が離せないようにするのだ。それを難なくやるのが彼なのだ」


撮影で、バサースト監督にとって特に忘れられないことがある。「実際に法廷でリンゼイ・ダンカンやコン・オニールなどと全て沈黙を守ることを決定したシーンを撮影していました。ベンがすることはただ dock に座って、目の前で自分の運命がどんどん勝手に彫刻されていく様を見ていることでした。その撮影中ほとんどの日、私はベンにカメラを向けずにはいられませんでした。とにかく彼のみに。彼の顔の表情の演技にはとにかく目を見張るものがありました」


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確かに、撮影現場に行けばウィショーの能力はもっとよくわかる。独房のシーンは、所内の指南役であるフーチ(ピート・ポスルスウェイトが演じた)と一緒だった。ウィショーは、ただ歯を磨くシーンでさえ観る者を引き込んでしまうのである。

いつものことだが、彼の静けさは、他の者を寄せつけないようなところがある。ポスルスウェイトとデヴィッド・ヘアウッド(悪事の元締めで老名主のフレディ・グラハムを演じ、主人公クルターにドラッグ密輸の見返りに刑務所内での擁護を申し出た)が二人で撮影の合間に冗談を言っている時でも、ウィショーは断固として沈黙していた。


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薄いグレーの収容者が着せられるスウェットスーツに身を包み、うな垂れて他に誰もいない刑務所の廊下を走り回る姿は、鳥がらのように痩せた身体を一層脆そうに見せる。

「ベンは本当に理解するのが難しい人です」とバサースト監督はランチ後に語る。「だいたいの役者は役柄から出たり入ったりというのがあるのですが、彼の場合、一日中役のままでいて、そこに介入されたくないようなのです」

自分では、このことに関してはよく判らないが、だいぶ小さい時から、誰か別の人物のふりをして演じている時が一番幸せだったと認める。
「ちょうどイースターを母と過ごし、古い写真を見まくりました。どの写真も、大体2歳頃から全て扮装していました。コスチュームを着ていない写真は一枚もありませんでした。あんなに小さい時から、ぼくはもう本能的に誰か別の人になりたかったんです」 


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この本能がどこから来たものか全くわからない。彼の両親も双子の兄弟ジェームズも、全く彼とは似ていない、と認める。遺伝子のなせる技ではない。ハートフォードシャーのヒッチンでの幼少時は、IT コンサルタントの父と化粧品販売の母と一緒だった。どうしてそれが、自動的に芸術方面に興味が向くようになったのか。

幼少時に演じたのとは別に、演技することが好きだと確信できたのは、サミュエル・ウィットブレッド・コミュニティカレッジの高校に行ってからのことだった。

「ぼくはアカデミックという意味では、中途半端でした。勉強するのはあまり楽しくありませんでした」と告白する。「演劇は、自分の中の遊び心と重なり合う部分であり、自分がそこにとどまっていられる方法でした」
それで、10代のウィショーは、ビッグ・スピリットという地元の青年演劇グループに入ることとなる。

Aレベル(大学受験資格に類する)資格取得の頃、ウィショーはエディンバラ国際フェスティバルで、プリーモ・レーヴィが自身のホロコースト(大虐殺)の記憶を綴った『If This is a Man』の舞台版でレーヴィを演じ、最初の大きな注目を集め、ロンドンのひとつのエージェントがつくこととなる。17歳の時に、ウィリアム・ボイドが初監督した映画『ザ・トレンチ 塹壕』で若い兵士の小さな役でデビューした。

「彼は、とにかくすごく良かった」とボイドは回想する。「よくわかっているようでした ― いい役者はみんなそうであるように ― Less is always more(やりすぎない方が、かえって意味深い)ということを。はっきり思い出すのは、撮影が終わってから何をしたいか、戻ってすぐにやりたいことは何かと聞いたら、彼が「A レベル取得です」と答えたことです」

高校を卒業後ウィショーは、役者としての仕事がもっと来るかと思い描いてのだが、何も来なかった。絵を描くこともかなり好きで、アートコースに行き出したが1ヶ月で止めた。「バービカン劇場で ' サミュエル・ベケット シーズン ' をやっていて宿題をそっちのけで毎日行っていました」と笑いながら思い出す。何を生涯の職とするかを決心し、RADA(王立演劇アカデミー) に申込み、入学が決まった。

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2003年の卒業以来、ウィショーはほとんど休み無く仕事をし続けている。最初の役は、ナショナル・シアターでのフィリップ・プルマン原作の His Dark Materials (『ライラの冒険』)でのブラザー・ジャスパーであった。
ジャスパーを演じ始めてすぐ、トレヴァー・ナンが、若くて傷つきやすいハムレットの役者の全国的なオーディションをしていた。ナンはウィショーの顔に打たれた。偉大なる繊細さと、驚くべき若さを兼ね備えた顔。彼はウィショーにハムレットの最初の独白をやってみるように言った。それからもう一度それを、五歳の子どものようにやるように言った。
「ぼくが動揺しているというのに、監督はむしろ楽しそうだった」とウィショーは思い出す。

演劇学校を出てたった一年にもかかわらず、ウィショーは、ハムレットを演じたことは、多くの意味においてかえって楽であったと言う。「誰もぼくのことを知らなかったので、全くプレッシャーがありませんでした。演じているときは、浮き足立つこともありませんでした」と思い出す。ハードだったのは、全てが終わってからのことだ。「とにかく抜け殻のようでした」という。

彼が、演じる役柄についてどう感じているか、その執着ぶりを説明するときは、人が変ったように饒舌になる。「ハムレットのような役柄には - ぼくはキーツもそうであろうと思っていますが -とにかく驚かされます。彼らが乗り移ります。彼らに恋をしてしまいます。ぼくを先に連れて行ってくれ、成長させてくれます。それまでのぼくよりもっと面白い人間にしてくれるのです。だから、彼らを演じ終わったとき、とてつもない空虚感に襲われるのです。まるでつないでいた手を離さなくてはならないような・・・」

ほとんど例外なく、ウィショーは演じた役を洗い流すことに難しさを覚える。「ディランにもある意味、恋をしました」映画『アイム・ノット・ゼア』の撮影のことを回想する。「ぼくはとり憑かれました。今はもう大丈夫ですが。いつもこうなんです」だが一度役柄がウィショーの意識下からなくなると、それは本当になくなってしまう。彼の記憶からほとんど消え去るほどだ。「一年前、ぼくがやったハムレットの舞台について RADA で話してほしいと頼まれましたが、何一つ思い出せないんです。ただひとつのセリフでさえ。自分がやることにその時はとにかく没頭してしまって、他はもう全く消えてしまうようなのです」 


セバスチャンが彼の記憶から消え去ってしまったのは、Brideshead Revisited の撮影が終わってたったの数ヶ月のことだった。まずベン・クルターに置き換わり、続いてキーツにとって変った。

ウィショーの記憶にあるのは、小説から役柄を導き出すのがとても難しかったということであった。脚本が送られてくる前、読む前に、小説から直接引き出す場合は特に…。「ぼくは、とりわけセバスチャンにそそられました。彼がいかに虐げられていたかということに」と役柄について語る。

d0160581_21204150.jpg「ベンは、私がセバスチャンに求めるうってつけの傷つきやすさみたいなものを持っていました」とジュリアン・ジャロルド監督は語る。

監督は、<とり憑かれたような面持ちで、かつダークヘア>の俳優をキャスティングしたのである。この役は天使のような金髪のアンソニー・アンドリューズが1981年 グラナダTV のドラマで演じたのが有名な役である。そのため、ドラマファンの中には眉をひそめた者もいる。

「小説の中では、ダークヘアと記述してあったことは確かです」ウィショーは聞こえるか聞こえないかに密やかに語る。 

「ベンは、仕事をしている時はものすごく集中していました」とジャロルド監督は付け加える。「でもまた息を抜くこともありました。撮影後、ほとんど毎晩ホテルのバーでエマ(トンプソン。レディ・マーチメインを演じた)やマシュー(グード。チャールズ・ライダーを演じた)と一緒に笑いまくっていました。

ウィショー自身にとって、仕事は自分が一番真摯でいられる場である。それはまた、彼が決して名声を欲していないことも物語る。「別に何もいらないんです」と彼は肩をすくめる。「ぼくは別にお金が欲しいとかオスカーを獲りたいとかそういうことは全く望んでいません。ぼくにとってそれらはどうでもいいことです。ラッキーだと思うのは、ぼくが「これだ!」と心底感じることに出会えたことです」

「いつかはやってみたいと思っている別のことも確かにあります」と続ける。「監督もやってみたいですし、また絵を描くことに戻りたい気もします。もしかしたら、こういうことを考えること自体が、いつか何もかも上手く行かなくなった時の自分を防衛するためのすべかもしれません」 

d0160581_2141415.jpg今のところ彼は先のことも過去のことも考えていない。The man of the moment
(現在の意中の男)=キーツに集中している最中だからだ。「彼のような人物の精神の中に入り込めるなんて、ぼくにとってすごい贈り物です」と言う。「とてつもないほど別の人物になりたい、という衝動があって、彼を演じることにはそれを満足させてくれる何かがあります。行ける限りの最上のところへぼくを導いてくれる何かです」 

ジェイン・カンピオン監督によると、キーツ役に決まる前にウィショーはすでにほとんど役にはまっていたという。「会う前に脚本についての email を送ってきて、とても打たれたとありました」と思い出す。「そして彼は本読みをするためにやってきました。私がドアを開けるとそこにはこの美しくて、壊れそうにもろい青年が立っていたのです。彼は人々がキーツについて書いているようなマジカルな本質を持っていました。そして彼が脚本を読みました。すぐに私は<彼はキーツのような詩がかける、そしておおいにそれらに愛を注ぐこともできる>と直観しました。

キーツとファニー・ブローンの物語は究極の悲劇です。二人はキーツが25歳の時に結核で若死にすることよって引き裂かれます。「死には耐えることができる」と彼は友人に書いている。「でも、彼女と別れることには耐えられない」。後に別の男性と結婚して子どもまで持ったが、ブローンは決して自分の初恋のことを忘れなかった。キーツからもらった指輪を、生涯首からかけて身につけていた。

「キーツは自身で、シェイクスピアが、自分が創造する役柄から自分というものを完全に消す術を知っていたと話しています」とウィショーは言う。「役者として、それはぼくがいつもやろうとしていることです。すなわち、ある意味、<ベンが完全に消え去り、キーツがまさにそこにいる>ということです。」

風邪のため具合が悪そうに、ウィショーは丁寧に挨拶して帰って行った。彼が去ったあと、何かぼんやりとした存在感がいい具合に漂っていた。いまさっき、確かにここにいたのに、次の瞬間にはもういなくなってしまったような。


'Criminal Justice' is on BBC1 for five consecutive nights from June 30


<了>
                           - Translated by uraracat -


Source :www.telegraph.co.uk/culture
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by uraracat | 2011-02-09 07:45 | ベスト10インタビュー 翻訳 | Trackback | Comments(1)

「L.A. の友人には手書きで手紙を書いています」 ベン・ウィショー

【Alliance of Women Film Journalist】  2009 September 17
AWFJ Women On Film - Ben Whishaw
on Poetry, Letter Writing, and “Bright
Star” - Jen Yamato interviews



ベン・ウィショーの内面には、確かに古い魂が宿っていて、押し隠そうとしても難しい。
彼は『パフューム ある人殺しの物語』でとり憑かれた殺人鬼を演じてブレイクし、イギリスの音楽伝記映画『ブライアン・ジョーンズ ストーンズから消えた男』でキース・リチャーズ、そしてトッド・ヘインズ監督の『アイム・ノット・ゼア』では、アルチュール・ランボーとボブ・ディランという二人の詩人が同居する役柄を演じている。

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彼は詩が好きで、また手紙を書くのも好きだ。この二つの失われた芸術はまさに彼の出た映画によって人気を取り戻すかもしれない。『ブライト・スター』は、叙情的な伝記映画で、19世紀の詩人ジョン・キーツと隣りに住んでいたファニー・ブローン(アビー・コーニッシュ)の短くも情熱的な愛を描いた作品である。

ウィショーは、浪漫派のアーティストであるキーツに共通点を見出した。若い人たちがもっと詩と出会うチャンスがあればいい、と語る。
彼が役を射止めたのは、ジェーン・カンピオン監督とオーディションを行なった後である。
彼は仕事を得たと同時に、彼女をノック・アウトしたのだがそのことに無頓着である。




JEN YAMATO: d0160581_180388.jpg
あなたは、20世紀生まれの二十何歳という年齢です。この19世紀の詩人の中にどのような共通性をお感じになったのですか?

BEN WHISHAW:
ぼくがこの人物に惚れたのは、彼の手紙や詩集を通して、彼が真に驚くべき繊細さと、資質と人間性の持ち主だとわかってきてからです。彼は自分の中で起きることの相互作用にとても敏感でした。
でも、また彼は同時に、そこまで負わなくてもいいほどの不幸を背負っていました、本当に。そして人生のはかなさというものを、23歳そこそこでもう気づいていたのです。

周りにはいつも‘死’が身近にありましたが、彼には繊細さと同時に、ある意味の強さ、反発力、ロバスト性(気丈さ-robustness)のようなものがありました。
―――ぼくはこのコンビネーションが美しいものだと気づきました。


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YAMATO:
どのようにして、あのような時代のライフスタイル、またはあの時代のものの考え方というところに自分を深く持って行ったのですか?

WHISHAW:
読むことがとても重要でした。手に入る限りの書物を読み、あの時は本当に自分をそこに沈め込んでいました。

キーツが恋人のファニー、その他の弟や妹、そして友人に宛てた手紙は実に美しく、またあの時代の人たちがお互いに話していた言葉遣い、彼らがしていたこと、社会的な生活、社会による制約やエチケット・・・手紙の中にはそれらが全て入っていました。とても生き生きと現れています。

ぼくはある意味、あの時代に恋をしてしまいました。

何かとても訴えかけてくるものがありました。人々がお互いにコミュニケーションする的確なやり方とでも言いましょうか。人々はだらしのない話し方をしませんでした。意志を通じさせるための、真に大切なことがあったと思います。一方現代は、コンピューターと電話の陰でコミュニケーションの方法は、わかりにくくなって混乱してきています。

ぼくにとってそれは大いなる啓示でした。これがこの映画に出たいと思った一つの大きな要素です。



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YAMATO:
手紙を書くという失われた芸術については、今日の現代的な文化の中で廃れてしまって、悲劇的な感覚さえあります。

WHISHAW:
同感です。あれでは本当のコミュニケーションをしたことにはならないのに、とにかく勿体ないことです。僕たちはみんな手書きの手紙を受け取ることがどれほど美しいかを知っているのに!
とても秘めた感覚があります、そしてそれを書くために実際誰かが自分のために時間をかけてくれたということなのです。
とても勿体ない損失だと思います。
が、わかりませんよ、幾ばくかの人たちがこの映画にインスパイアーされて、また手紙を書き出すかもしれません。


YAMATO: あなた自身は未だに手紙は書かれるのですか?

WHISHAW:
ええもちろん書きます!と言っても結局は email になってしまうのですが、一人友人が L.A. にいて、その友人とは主に手紙でコミュニケートしています。


YAMATO:
素敵ですね。二人の人間がお互いにそうしようと交し合うと同時に、より関係が深くなりますよね。

WHISHAW:
そうです。相互により交流が深まります。


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YAMATO:
今の年代の私たちは、手紙を書くことをありがたく思わないばかりでなく、詩というものにもほとんど興味を示しません。

WHISHAW:
ええ、そう思います。それは一部には、理解するのが難しいからではないでしょうか。ぼくたちは、全てを理解しなさいと教えられる世界に住んでいます。

おかしいと思うのは、学校で詩についての作文を書かされることです。もちろん学ぶことはできます。でも詩の醍醐味というのは、それが自由で、そこにどういったことも含まれていて、誰が正しくて誰がまちがいかなどということはあり得ないところです。

それが、ジェーン(カンピオン監督)がこの映画の中に取り込もうとしたことです。詩を読んだ時、その神秘の中にたゆたってあるがままでいるということが必要だと。
それがぼくたちが自由である方法です。そしてそれはゆっくりとしたプロセスです。我々はこんなにも高速な世界に住んでいるからこそ。

もし人々が詩を読む歓びを再び見出してくれたらどんなに素敵でしょう。人間にとってそれはとてもいいことだと思うんです。


YAMATO:
先ほど、あの時代、言葉が丁寧に語られていたとおっしゃいましたが、ファニー・ブローンとジョン・キーツの間に交された手紙をお読みになって、彼らの関係が情熱的になったときでもそれは変らなかったのですか?

WHISHAW:
彼は偉大な書き手でした。だから彼が書いたものは全て、くだけたことや瑣末なことを述べるときでもとても美しく書かれていました。それは彼がそうせずにはいられなかったからだと思います。
色々違ったスタイルの手紙の書き方があります;ときにゴシップ的たり、下品だったり、そしてまたいつもではありませんが、とても詩的だったり。でも、どんなモードの時でも、いつもちゃんと構成されていて、言葉に、ある種の風味がありました。


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YAMATO:
映画は相反する魅力を提起したストーリーになっていると思うのですが、静かで知的なジョン・キーツが歯に衣着せぬ若いファッショニスタに落ちるという。
キーツを演じられてみて、彼はファニーに何を見出したのだとお思いですか?

WHISHAW:
彼が見たものは、ぼくが思うには、ちょっと彼に似ている部分、独立していて、ちょっと社会に挑戦的、自分のことを自分自身で考えているということ、彼が真に人を尊敬した部分でもあります。

そして一番重要なことは誠実さです;ぼくはキーツが真実の探求者だったと思います。人とお互いに正直に話をしたかった。そして、ファニーは実際そうしました。また、彼女はキーツに対してはとても違っていました。おっしゃるように、彼らはそれぞれ別の生き方をしていました。その点ではとても異なっていました。でもぼくは、それがまたとても魅力的だったに違いないとも思うのです。



YAMATO:
『ブライト・スター』は型にはまらない伝記映画です。キーツの人生においてのこの短い期間―ファニー・ブローンとのロマンスとその関係にフォーカスしています。ロマンスが彼の人生において決定的な瞬間だったことを意味しています。恐らく彼らの愛がキーツ自身、自分の才能を見出す鍵にもなったのではないでしょうか?

WHISHAW:
彼のベストとされる詩、または現在、傑作と言われている詩のほとんどは、交際中に書かれたものだと思います。全てのオード(頌歌)や、『聖アグネス祭前夜』(The Eve of St. Agnes)や『つれなき美女』(La Belle Dame sans Merci)などの美しい詩は全て彼がファニー・ブローンとの愛の中にいた時に書かれたものです。 ギリシャの壷や、ナイチンゲールについての詩だったとしても、ある意味、どれも愛についての詩だと言えます。対象についての献身ということもできます。直接ファニーに向けられてはいませんが、ぼくはそれらがラブ・ソングのようにも思えます。


YAMATO:
キーツの詩のスタイルは自然を強調しています。そして自分自身を宇宙へ旅する船にしています。この点はあなたが演技をするときの感覚に似ているところはありますか?

WHISHAW:
ええ、そのとおりです。それはオーディションの時、ぼくがジェーンに言ったことの一つでもあります。オーディションでちょっとシーンのセリフを言うテストがありました;
「詩人はいつも別のものに宿ってばかりいるから自分のアイデンティティがない、見るものすべてに自分自身がなってしまうのだから」

ぼくは、それがちょっと役者に似ている、と言いました―いつもこうやって別の人間のことを理解しようとばかりしているので、ときどき自分が誰なのかという感覚がなくなってきます。
あなたのおっしゃることはまったくそのとおりです。詩人も役者も、船(器)とか回路とかそのようなものになろうとする性質があります。


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YAMATO:
ここのところ立て続けに演じてらっしゃる ― 『パフューム』のジャン‐バティスト・グルヌイユ、『アイム・ノット・ゼア』のアルチュール・ランボーとボブ・ディラン、そして『情愛と友情-Brideshead Revisited』のセバスチャン・フライト ― などを拝見しますと、あなたの年代の俳優にしては、文学的作品やクラシックな役柄が多いように見受けられますが。

WHISHAW:
不思議なことに結果的にそうなっているだけなのです。また、ぼくは本当にそういうのが好きでもあるんですが…。そういった役柄にとても惹かれます。小説家が描き出す役柄は、映画の脚本で描かれる役柄よりも数段リッチだと思います。実際に生きている人々のように感じられますし、歴史と未来があって、本当にそこに息づいています。とても惹かれます ― 役者は誰でも ― 我々は、コンプレックスを持っていたり、一風変っていたり、他に考えうるどのような人間の在り方であれ、複雑な役柄に惹かれます。
だから、そうです。こういうわけですから、結果的にもああ言った役がくるのでしょう。でもまた、相互にはまったく関連性はないのです。

 
YAMATO:
ジェーン・カンピオンは、オーディションのあなたに格別の感動を覚えたと言っていました。どのような感じだったのですか?監督たちにいつもそういう印象を与えるということにあなた自身は気づいているのですか?

WHISHAW:
[ベン、笑う] 彼女にそう言われました。そして後でそのことを話しました。でもぼくは、正直言ってとにかくとてもとてもあの役をやりたかったのです。脚本が素晴らしかった。そして彼女の映画が好きでしたから。
また、「これは自分のものだ」、というとても強い気持ちがただただ大きかったんです。「ぼくはこれができる」という確信が――。役を選ぶとき、時としてこういう気持ちが起きることがあります。

そして、ぼくはこの気持ちでオーディションに行きました。そこでファニー役の若い他の女優と読み合わせをしました。ジェーンはぼくよりも、その子の方により関心があるようでした。だからぼくは、「OK, ちょっと10~15分、女優のセリフの相手役に呼ばれただけなんだ」と自分で思いました。

ジェーンはこの娘をオーディションしていてぼくには興味を示しませんでした。それでぼくはあきらめ始めました- 「OK, 人生とは自分の思い通りには行かないものなんだ」みたいな感じで。だから、ジェーンが観ていたようにはぼくは観ていませんでした。そういう意味ではあそこでは全く噛み合っていませんでした



YAMATO:
アビー・コーニッシュとは、オーディションでもスクリーン・テストでも事前に全く顔を合わせなかったのですか?

WHISHAW:
そうです。これがジェーンのすごいところのひとつです。とにかく直観的なんです。彼女はぼくとアビーが上手くいくという直観があってそれを信じたのだと思います。
アビーとはリハーサルの初日まで会いませんでした。ぼくは会って二人の相性を見たいと思ったのですが、会いませんでした。とてもめずらしいことです。


YAMATO:
リハーサルの最初の日にアビーと初めて会ってどうでしたか?

WHISHAW:
ぼくはちょっと緊張していたと記憶しています。一緒に集中した現場で仕事するのが判っていましたから、しばらくはお互いを品定めというか、においを嗅ぎ合っている感じでした。でもかなりはやいうちに、ぼくは「彼女は行ける。oh yeah, 君を信じるよ」と言う感じになりました。そして彼女もオープンになってきて、ぼくもリラックスできました。それからあとはただただ楽しかった。


YAMATO:
このあとロンドンに帰って、ちょっと一休みですか?

WHISHAW:
一週間休みをとると思います。それから、舞台の稽古に入ります。マイク・バートレット作の『Cock』という芝居です。





(了)







Source : http://awfj.org/2009/09/17/3924/
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by uraracat | 2011-01-02 16:09 | ベスト10インタビュー 翻訳 | Trackback | Comments(1)

ベン・ウィショー EXAMINER  インタビュー記事訳 

Ben Whishaw loves playing dark and
damaged characters

September 25th, 2009  By Carla Hay, Celebrity Q&A Examiner


多くの役者がそうであるように、イギリス人俳優ベン・ウィショーも実生活では内向的である。しかしながら彼と何度か話をしてみると、多面的な性格を反映するかのように、彼がいたずらっぽい眼光を放つのに気づく。

2006年の『パフューム ある人殺しの物語』、2007年の『アイム・ノット・ゼア』、2008年の『情愛と友情』、2009年の『ブライト・スター いちばん美しい恋の詩』といった出演作において、<外に現れている以上に、主人公の内面では様々なことが起きている>という役どころを演じることで、彼が実力を示してきたことに疑う余地はない。

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『ブライト・スター』(脚本・監督はアカデミー賞受賞歴のあるジェーン・カンピオン)でウィショーは実在したイギリスの詩人ジョン・キーツを演じている。キーツは1800年代ロマン主義時代の偉人の一人である。『ブライト・スター』の物語の核心は、キーツと当時、隣に住んでいたファニー・ブローン(オーストラリアの女優アビー・コーニッシュが演じる)とのラブ・ストーリーである。ファニーは貧乏詩人との恋を認めようとしない社会の壁に直面する。





『ブライト・スター』が2009年トロント国際映画祭で、カナダ・プレミアとして上映される何時間か前、トロントのヨークヴィル近隣のインターコンティネンタルホテルでウィショーに会い、1対1のランチタイムインタビューを行なった。
彼のスクリーン上の人物像はしばしばダークでミステリアスであるが、ウィショー本人はインテリジェントで、はっきりとものを言う、紛れもない一流のタレントである。我々は将来、この俳優から素晴らしいものをもっとたくさん見せてもらえることであろう。



ジョン・キーツを演じることになった時にどういうことが心の中をよぎりましたか?そして何が一番あなたの責任だと感じましたか?


そのことについてジェーン(カンピオン)と話し合いました。というのも、リハーサル中に、ぼくは急に演じるのがとても恐くなったのです。ジェーンの答えは
「私たちは私たちの読み取り方をすればいいのです。キーツについてできるだけ多くの資料を集めるのです。生前彼がどうだったか知る者はいません。誰も彼が出ているビデオを持っていません。彼を知る者はもうこの世にはいません。ですから私たちにできる唯一のことは、私たちが彼を愛しているということを信じることです」
ぼくはその返事を本当に素晴らしいと思いました。そういう意味においてぼくは本当にキーツという男に愛を感じていました。そしてそれを信じました。


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キーツの書いたものであなたが個人的にインスピレーションを感じた作品はありますか?

前には彼の作品を知らなかったのですが、彼の手紙の中の一通に書かれている“ネガティブ・ケイパビリティ”と呼ばれる考え方に出会いました。これは、<究極的に不確実だ、疑念だと思われることでも、その中に身を置いてみることで、我々はその世界に自分が存在できうる>という概念です。奇しくも" His Dark Materials " (『ライラの冒険』)というファンタジー小説三部作を読んだ時にもこの言葉と出会いました。あれはお読みになりましたか?

はい、読みました。

主人公が別世界へ行くとき、(著者の)フィリップ・プルマンはキーツの<ネガティブ・ケイパビリティ>を引用しています。別の宇宙へ行くときの心の状態はまさにこういうものなのではないでしょうか。キーツはまさにそれを言っているのだと思います。<知らないこと>の中にいてもリラックスできるのだ、と。


あなたは、これが定番、という役者ではないと思いますが、心理的に追いつめられる役やダークな役柄が多いように思います。ご自身では、その傾向を打ち破ってもっと明るい役柄をやりたいとお思いなのですか?

自分では本当の意味で明るいタイプの性格だとは思っていません。ぼくが惹かれるのはある意味、複雑な役柄です。フィルムメーカーは人間の本質を探究する物語を語るのです。そして人間とはいつも欠陥のある存在です。


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ジェーン・カンピオン監督と一緒に仕事をしてみていかがでしたか?

ジェーンとのとても深いつながりを感じました。それは自分でもよく説明したり、分析したりすることができないものです。会話ではない類のコミュニケーションによってわかり合っていたと言えます。それはもっとエネルギーとでもいうか、本能的なものです。すぐに何かを感じるある種の人物のエネルギー・・・そしてぼくはジェーンに即座にそれを感じ、反応しました。お互いよく知り合う前からジェーンはぼくのことを理解しているように感じました。彼女には人間についての驚くべき直観があります。


『ブライト・スター』の中で撮影前、いちばん緊張したり興奮したりしたのはどのシーンですか?

ヴァレンタイン・シーンのことを思い出します。今思うと、何も問題ではなかったのですが、あの時は ―― あのシーンは比較的初期に撮影したのですが ―― ジェーンは全く自分でどう撮りたいのか掴んでいませんでした。ぼくはそのことにとても失望しました。でもその日、ジェーンをすごいと思うこととなったのです。彼女は何が起きてもただそれを信じたのです。ある意味、ぼくたちに心の準備をさせ、それからどのように飛び立つかただ待つのです。そしてぼくらがどこに飛ぼうと着いて来て、そのことに本当に満足なのです。

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才能ある監督といえば、あなたはジュリー・テイモア監督とも仕事をなさいましたね。映画『テンペスト』でアリエルを演じました。それについてちょっと話していただけますか?今回のこのヴァージョンに関してシェイクスピア・ファンに言いたいことは何でしょう?

[ヘレン・ミレンがプロスペラーとなって]プロスペローが女性によって演じられるということは実際、すごいアイデアだと思いますし、それがとてもうまく行ったのではないでしょうか。ジュリーは、しかしとてつもないエネルギーの持ち主で、ぼくは彼女と仕事するのをとても楽しみました。彼女はある意味、シェイクスピアに忠実であろうとしたと思います。そして、他の時代性を組み入れようとはしませんでした。ただシェイクスピアが意図したことをシンプルにそのまま描きたかった。彼女なりの忠実な翻訳になっていると思います。

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いつかご自分でも監督をしてみたいとお思いですか?

ええ、一度やってみたいと思っています。多分映画でしょう、でも先に舞台を演出するのがどんな感じなのか見てみたいとも思います。

すぐにウエスト・エンドがいいですか、それとももう少し小さいところで?

役者といる部屋がまず必要です。彼らがどうやるかみるための。

最初に演出する作品はオリジナル脚本のものがいいですか?それとも原作があるものの脚色?

わかりません。その時惹かれているものなら何でも。


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あなたは映画でよくアーティストの役をおやりになっていますが、芸術にとって悲しみと喜びではどちらの方がインスピレーションを受けやすいですか?

ぼく自身は悲しいことにとても惹かれます。そこには何か大きな感情の動きがあります。芸術作品によって感動するというセンセーションは人間の魂にとってとても大切なことだと思います。
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2007年に「アイム・ノット・ゼア」でボブ・ディラン、2005年に「ブライアン・ジョーンズ ストーンズから消えた男」でキース・リチャーズを演じています。実際、一緒に飲みに行くとしたらどちらのロックスターがいいですか?

どちらと飲みに行くのも、なんだかちょっと恐いですね。

ええ。キース・リチャーズはナイフを持ち歩いていましたし、ボブ・ディランは銃を持っていました。彼らを一緒にしちゃいけません!

[ベン、笑う]今はボブ・ディランの飽くなきチャレンジ精神には惹かれていますけれども、実際、選ぶことはできないと思います。ディランのペルソナ的なところ、つまり芸術家が持つ変幻自在性みたいなもの、にとても興味があります。常に変化し続ける人格とでもいうか・・・。

そしてそのペルソナは時には下着売りになったりもします。ディランが2004年に
Victoria's Secret(ランジェリーのメーカー) のテレビコマーシャルに出ていたのをご覧になりましたか?

いいえ。

それは残念です。なぜなら彼はそうすることによって人々が抱く今までの彼への期待を裏切りたかったのです。このCMで批判を受けましたが、それでも彼は伝説と呼ばれ続けていますし、人々は彼が次に何をするかに依然、興味津々です。

全くです。


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では、この次のプロジェクトについて話しましょう。

ロンドンで一つ舞台をやって、それからニューヨークでも舞台をやります。そしてその次はもし資金が集まれば、多分映画を一本。
ロンドンの舞台は " Cock " というタイトルでロイヤル・コート劇場でやる新作です。今からとても楽しみでしょうがありません。そのあと、ニューヨークで " The Pride " というのをやります。



役者になろうと決めたときのことを憶えていますか?

「役者になろう」と決めたはっきりとした瞬間の記憶はないんです。わかっているのは、母が取っておいてくれたぼくが6歳頃に書いた学校の作文の内容だけです。「大きくなったら何になる?」と訊かれて「役者になりたい」と書いてありました。その歳で役者の何たるかも知るはずがなく、どうしてそう書いたのか全く判りません。


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d0160581_23171919.jpgあなたは王立演劇アカデミー(Royal Academy of Dramatic Arts)を卒業なさっています。あそこではいつもディベートがあるそうですね。役者にとって、公式のトレーニングと実生活体験のどちらがより演技によい影響があるかという。あなたはどうお考えですか?


意図的にではないんですが、ここのところオフの時間が持てています。半年間ほとんど演技の仕事はしていません。それをとても価値あることに感じています。なぜなら、世界にただ自由に存在するだけでいいのです。そして人間としてただ ' 在る 'ということを体験するだけでいいのですから。次にやる演技の仕事のことに今すごく興味をそそられています。実生活(人生)と演技にはとても興味深い関係があるのは確かだと思います。


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あなたが演じた役のいくつかは、ご自分の実生活に基づくものだったと受け取ってもよろしいのでしょうか?(冗談めかして)私たちは、ジョン・キーツのようにロマンチックな詩の朗読をするあなたや、キース・リチャーズのような乱痴気パーティをするあなたを想像してしまいますが・・・?

[ベン、笑う] たまに、演じている役柄とその時実生活に実際に起きていることが同時にシンクロするという不思議な偶然があります。いつもではありませんがときどきあります。演じる役柄が自分の生活とダブります。それは意図して起きるものなのか、偶然に起きるものなのかはわかりませんが、時として、並行して起きることがあります。

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双子のご兄弟のジェームズは、アートに興味がありますか?

いいえ、まったくありません。

一卵性双子ですか、それとも二卵性?

二卵性です。二人ともお互い全然似ていません。あらゆる意味で対極と言っていいほどです。今現在、彼が何をしているのかさえ知りません。越して行ってしまいました。今、恋をしているようです。

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恋をするといえば、『ブライト・スター』の中のジョン・キーツとファニー・ブローンのラブストーリーは信じられないくらい感動的でロマンチックでした。あなたとアビー・コーニッシュはその物語に命を与えたと称賛されています。アビーがこの役にうってつけの女優だと感じた瞬間はありましたか?

大分早い時期にアビーと森の中を歩く、というシーンがありました。これが最初の瞬間かどうかわかりませんが憶えています。演技をしている時、ぼくが言った何かに対して彼女が笑いだしたのです。その時、彼女の表情が驚くばかりに耀いたのです。それは彼女の中から涌いて出たパワーのようなものでした。ぼくは " Oh, wow!" と思いました。その時、彼女と一緒に面白そうな旅ができそうだと感じました。撮影中、外ではほとんど話らしい話はしませんでした。どちらかというと直観的な関わりでした。

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キーツの作品の多くはファニーとのロマンスによって生まれたとされています。もし、彼が生きているときに彼女をこれほど愛していなかったら、彼は芸術家としてどうであったと思われますか?また、後世にどのように名を残したと思われますか?

社会的には、批評家や周辺の人たちからはもっと受け入れられていたかもしれません。彼がファニーに書いた手紙が発見されたとき、この男、この詩人が自分の感情をこうも率直に表現していることを人々は「何たることだ!」と感じました。彼がああも正直に書いたことが、ある種、人々には居心地が悪かったのです。もしかしたら、もう少し安定することによって、歓迎されたかもしれませんし、アウトサイダー的要素がもう少し少なくなったかもしれません。生前は自分自身のことをすることで、もう少し温かい(人の目の)中で生きられたかもしれません。



-了-




Source:www.examiner.com






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Ahhhh! Sigh ・・・!!!
The more I translated his interviews, the deeper my love goes into him !!!

' a first-rate talent ' だって☆!☆

初めて使われてる表現 。。。 (やっぱり?!?) 
そうよね 。。。ただ者ではない " ベン様 "

(ブログPart I の方にあの時点で気に入った部分の訳のみ載せましたが、ここには全訳を載せました)
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by uraracat | 2010-12-24 17:16 | ベスト10インタビュー 翻訳 | Trackback | Comments(1)

ベン・ウィショーの『ハムレット』 ― 我々の時代の狂えるプリンス

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From The Sunday Times May 2, 2004

Interview: Stuart Wavell meets Ben Whishaw

A crazy prince for our times

On Tuesday evening a violent electrical storm shook the Old Vic just as a star was
born on stage. Ben Whishaw’s sensational Hamlet was hailed by critics the next day as a performance that earned the 23-year-old actor a place among the immortals.

火曜日の夜Old Vic 劇場にまさにスターが誕生し、激烈な電気ショックが走った。ベン・ウィショーのセンセーショナルなハムレットは翌日、名声不朽の俳優たちに並ぶ23歳の若き役者の名演として批評家たちに賞賛された。
 

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記事の賞賛ぶりにのぼせあがってもいいものだが、ウィショーは批評を読まなかったと語る。なぜ?

「なぜなら、もし、よく書かれてあったとしたら、急にそれにしばられてしまうだろうし、悪かったとしたらもっと最悪です。どちらにせよ自意識過剰になるだけです」

でも、ことがうまく進んでいることを知るくらいには・・? それについても小妖精のように笑って

「母が『ぼくが新聞の一面に出ている』と電話してきました。ぼくが知りたくないと言っているのに、話し続けていました」



水曜日の喝采までは、自分でも周りに散々なものになるだろうと話していた。本当に最悪の事態に見舞われたのだろうか?

「ええ、全くです。批評されるという経験があまりありませんでした」

トレヴァー・ナンが表出しようとする若々しい舞台で、ぎこちなく痛々しいほど痩せた特徴を生かして、不安に満ち、病的なほど絶望に打ちひしがれ、とにかく人をつき動かさずにはおかないデンマークの王子を演じた。

ある批評家は、ウィショーが、何を信じていいのか苦悩しながら睡眠薬の瓶と折りたたみナイフをじっと見つめて、“To be or not to be ”と言う語り口の密度の濃さに打ち震えたという。そして 彼が、今までOld Vic 劇場で演じられてきた伝説的な『ハムレット』の一人に加わった、と書いた。これらの名優たちのほとんどは、それまで培った長年の実力で大役に取り組んだはずだが、ウィショーの場合、演劇学校を出てわずか1年だった。

d0160581_6551845.jpg実際、力強いハムレットを演じたジョン・ギールガッドとピーター・オトゥールは、たったの26歳でスターになった。そしてケネス・ブラナーは28歳で注目された。しかしながら、ほとんどのハムレットは中堅の域に達してからのものが多い。ナショナルシアターで開演したアルバート・フィニーの場合は「太って、息も絶え絶えの」39歳のハムレットだった。フォーブス・ロバートソンは44歳、ヘンリー・アーヴィングは37歳、そしてジョン・バリモアは40歳だった。


さらにウィショーは無名の新人でいることには利点がある、と続ける。


「このプロジェクトでぼくが興奮したことの一つは、ハムレット役のために有名俳優を使わないということです。その方針はとても理にかなっています。もし、スターが出るからチケットを買うというのでないとすれば、その芝居を新鮮に見られるはずだからです」

しかし皮肉なもので、初日で彼はスターになってしまい、誰もが彼を観たがったのだ。

ベッドフォードシャーの田舎からいきなり演劇界のエヴェレストに登るようなすさまじい大躍進を遂げたのだ。
途中で下山した役者も何人かいる―有名なところではダニエル・デイ-ルイス。自分の父親の幽霊が舞台の袖に潜んでいると言ってステージを去り、二度と戻らなかった。


この役は凄まじいまでのスタミナを要する。ウィショーは3時間半のマラソンを週5日ぶっ続けで走るのみでなく、そのステージ上でもほとんど出ずっぱりである。

(5月に始まって)「7月末までやるのかあ、って思っていました。最初の頃、トレヴァーが、RSC(ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー)でハムレットの演出家 Buzz Goodbody という人が衣装リハーサルの夜、自殺した話をしてくれました。それは、この作品をやるとそういう境地に向かう可能性があるけれども、自分にはそれと別に、自分自身の人生(生活)があるということを忘れてはならない、という警告的な教訓でした」

d0160581_6592369.jpg人生=生活という言葉がむなしく聞こえる。午後2時にベッドを這い出してすぐに劇場に向かう。彼はこの役に決まってからずっとプレッシャーを感じていた―しかもこの稽古期間中、実際にフィリップ・プルマンのシリーズを舞台化した『His Dark Materials 』にも出演していたのである。これもまた3時間のステージで、ウィショーは何役かを兼ね、衣装替え回数も半端ではなかった。

「人生において、いつか必ずこの分を取り戻すつもりです」

と力なく言う。

(とにかく痩せている。私はあとでナン監督に彼はちゃんと食事を摂っているのかときいてみた。「よく食べますよ」と監督。「なのに彼がなぜあんなに痩せているのかと、製作現場の女性はみんな毎日のようにベンにダイエットについて質問しています」)

「とても支えてくれて気にかけてくれました」

ウィショーはナン監督について語る。 だがまた

「同時に、自分の舞台をベストなものにしたかったので、どの役者にもとことんまでやらせました」

セリフをいう時、何か見えないエネルギーがこの役者の腕ややせ細った指を思わず知らずぎくしゃくと動かす。しかし、凝視する目は静かで思慮深い。

ピーター・オトゥールは、もし本当の孤独というものを味わいたかったら「ハムレットを演じるといい」と言いました。ウィショーはステージで孤立感を感じたのだろうか?

「孤独だと言えます。なぜならハムレットは、他のどの芝居のどの役よりも独白の量が多いからです」

と力説する。そして彼はまだ“難題と脅威”への挑戦を続けていると認める。
劇の冒頭、この役に感情移入するためのスイッチを入れる瞬間が特に難しい。

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「それは哀しみと絶望の場所だからです」

と静かに語る。

「行くのがとても難しい場所です」 
「この男は、何事にも我慢のできない男です。それで、あとになって向き合わなければならない別の課題がやってきます ―
父親が殺されて復讐を余儀なくされる。
そのこと自体に参ってしまいます」



こうやって注意深い返事をしたけれど、ウィショーがセイフティ・ネットのない空(くう)を歩いているかのように感じているのは明白だ。

「背後には何もないのだと感じます」


と告白する

「ハムレットがどう感じたかが解る瞬間もあればそうでない時もあります。後ろに倒れても何ら支えとなるものはないのです」


彼は Old Vic 劇場に出るという、演技の品定めをする幽霊に出会ったのだろうか?
彼は否定する。 
d0160581_753536.jpg「今回はみんな若いキャストなので、そういう意味での伝統に縛られることはありません」


ラングフォード(ベッドフォードシャー)の村に育つ。父、ジョジー・ウィショーはかつてStevenage のサッカー選手で、母は化粧品会社に勤めている。両親はもう離婚しているが、二人ともずっと協力的だった。双子の兄弟がいて、今はフランスのスキー・リゾート関係の仕事をしている。ベンとは全く違うタイプだ。


扮装して靴を履いて人前で演じたことが、その後の下地となるいわば儀式であった。
シェフォードのSamuel Whitbread コミュニティカレッジでさらにそれが磨かれた。

彼はそれを 「素晴らしかった」 と思い出す。


小説家ウィリアム・ボイドがはなばなしく監督デビューした『トレンチ 塹壕』で決死の兵士を演じた時、彼はまだ A-レベルのための勉強中だった。

そして『My Brother Tom 』では主役を射止め、虐待を受ける10代の少年を演じて
" most promising newcomer "(最も将来を約束できる新人)賞を受賞した。


a0199551_1421255.jpg「将来したいことが演技だと決めた瞬間を覚えていません」 と言う。

演技を職業として選ぶことをちょっと迷ってアート・コースに通い始めたこともあった。

「あの時はそういう決断をしました。なぜなら何もすることがなかったんです。オーディション一つなく、仕事も全くありませんでした」

そして RADA(王立演劇アカデミー)に入学した。自分で貯めた£3,000(約45万円)を一年分の授業料とした。その年はこの上なく素晴らしい学びがあった。4年間ずっと意義のある日々だった、と語る。


あの頃、CV(履歴書)の趣味の欄に" 猫の繁殖 " と書いていた。なぜかときいてみた。彼は笑う。

「演劇学校の時、友だちと二人で住んでいて、2匹の捨て猫を拾いました ― 
母猫と子猫です。増やそうと思って増やしたわけではないんですが、勝手に
増えました。寝室2部屋のフラットで、多いときで11匹の猫の世話をしていました」



ハムレットのオーディションにはそれほど期待しないで出向いた。キャスティング・ディレクターを知っていて、ナン監督と会えるように計らってもらった。

「ローゼンクランツかギルデンスターン役のためだと思っていたんです。トレヴァー(ナン監督)はもうハムレット役を決めていたと。。。」

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だがそうではなかった。ナンはもう2回ほどオーディションにウィショーを呼んだ。「そしてもう一回呼び出しの電話をしようとしていた時、(キャスティング・ディレクターに?)『今日決めないと彼を逃しちゃいますよ』と言われました。それで決めました。本当にそうしてよかったです。ベンは監督の“夢”です」

ウィショーも喜んだ。その時のことを語る・・・

「遅れてきた喜びでした。もう、びっくりです!すぐには理解できませんでした。ぼくがハムレット役をやるなんて――― 最初のリハーサルの通知がきて、ハムレットの名まえの横に自分の名まえを見るまでは全く信じられませんでした」

エヴェレストに挑んだ後は、どこに登ろうというのか?彼はあいまいに笑いながら・・・

「降りる?」

ナンによると、ハムレットは頂上から麓に向かって叫ぶようなかなりのエネルギー消耗の場となり、俳優は仕事を続けるためには、ある意味、演技より自分を大事にする必要があるという。

「ベンなら何でもできます」ナンは保障する。「エヴェレストの後は、K2 もあるし未踏の山々はいくらでもあります」


実際、ウィショーは今やってる舞台のことしか頭にない。HBO製作のテレビシリーズ
『Rome』のオクタヴィアヌス役で出演契約が済んでいるとのことだが…。

「今はただハムレット、ハムレット、ハムレット。それしか考えられません」

と彼はいう。

その言葉はまるで、葉巻を欲しくてしょうがない男のように響いた。


― 了 ―


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Source: timesonline.co.uk/news








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by uraracat | 2010-10-14 00:00 | ベスト10インタビュー 翻訳 | Trackback | Comments(0)

ベン・ウィショー The Spectator インタビュー記事 訳

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【SPECTATOR ― Arts & Culture】
31 October 2009 by Marianne Gray

In love with Hamlet,
Dylan, Keats . . .


Marianne Gray talks to Ben Whishaw
about how he finds an affinity with
the characters he plays

マリアンヌ・グレイ、ベン・ウィショーにきく ―
演じる役にどのように自分との共通性を見出すか



ベン・ウィショーは黒いTシャツを着て、一瞬誰だかわからない様子で、ロイヤルコート劇場のカフェの暗い隅っこで赤ワインを飲んでいる。マイク・バートレットの新しい芝居Cock のリハーサルの合間をぬってここにいる。この芝居では、ボーイフレンドとしばらく距離を置いているときに偶然、この女性!と思える女性に出会ってしまう若者を演じる。若者はこの状況に翻弄される、という内容だ。

インタビューを受けることはウィショーの好きな仕事ではない、と聞かされていたが、ここではまったくそんな様子はなかった。不機嫌でもないし、話をそらすようなこともない。おそらく最近、ジョン・キーツを演じた映画『ブライト・スター』のプロモーションのためアメリカ各地を回ったことで、有名人として振舞うことに順応してきたのかもしれない。

座った途端、乗り出すように私に向かって意味深な様子で語る。

「役者にとってサプライジングな部分を残しておくということは大切だと思います。その役者のことを知りすぎていると、純粋に演技をみるのが難しくなります。
知られざるエリアというのは必要です。そうでなければ演じる役柄ではなくてただ、
《スター》を見ることにしかなりません」


彼の言うことは全くその通りだ。しかし、彼にとっておなじみの名まえになるのが不本意であっても、ウィショーは確実にスター路線を歩んでいる。

『ブライト・スター』 ― キーツとハムステッドの隣部屋に住むファニー・ブローン(アビー・コーニッシュ)の恋愛物語に想を得た映画である。この映画に出ることでウィショーはそのバランス感覚を磨いたのかもしれない。
この映画はアメリカのテイストメーカーたちに好感触で受け入れられ、先月行われたロンドン映画祭でも観客を魅了した。もうすぐワールドワイドに公開される。' オスカー ' とか ' ノミネーション ' という言葉も、特にウィショーの演技に対してささやかれている。

キーツを演じるのはハムレットを演じるのと少し似ていたと言う。学校を出て1年、Old Vic 劇場でのトレヴァー・ナン演出2004年の作品『ハムレット』では焼けつくような印象を残した。どちらの役も彼にとって深遠な愛からどん底の絶望へと、巨大で怒涛のような感情の渦を、演技によって存分に表現する絶好の機会であった。彼はハムレットに恋をし、そしてキーツ ― トッド・へインズ監督の『アイム・ノット・ゼア』でシンガーを演じた時はボブ・ディランにも恋をしていた。

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「ぼくはいつも感情面でなにか訴えかけてくるものを求めています。キーツはそれを与えてくれました」

ウィショーは静かな語り口で言う。彼は映画を撮る前、キーツの詩を読んだことがなかった。どちらかというとテッド・ヒューズや T.S. エリオットなどの20世紀の詩人を好んでいたが、キーツをすぐに好きになった。

「キーツの詩や手紙を読んだり、それらを唱えたりすることで、彼がとても人間味にあふれた人物で、情熱的だったことがわかりました。彼の作品の豊穣さと、官能性がとても好きです。言葉と韻律は遊び心に満ちています。彼は優しい感性と同時に人生を生き抜く気丈さも兼ね備えていました。彼の言葉は正直で妥協せず、それでいて繊細でした。ぼくはインスピレーションを受け夢中になりました。そこから得た確かなものが自分の中に残っています」

そしてウィショーはキーツと自分にある類似点もみている―少なくとも仕事をするときの姿勢がそうである。例えば、キーツの一通の手紙をどういう風に読むのか、そのとらえどころのない実体を必死に捉まえようとした。と回想する。

そして、付け加える
「できるはずだと思うんです」

「撮影中、ジェーン(カンピオン監督)から落ち着いてリラックスするよう言われました。『あなたをブロックしているものがたくさんあります。そんなに頑張りすぎないで』と」


若く見える29歳。はっきりと物を言うがいたずらっぽくもあり、思慮深い。カンピオンは彼のことを「猫のように美しく・・・この世のものとは思えない」と形容した。それを言うと、彼は前髪をくるくるいじって困ったような様子だった。有名人でいることに居心地がよくないことは明らかだ。しかし仕事に対する熱い思い ― 仕事選びは大胆である ― は自然に我々に訴えかけてくる。

d0160581_228549.jpgベッドフォードシャーに生まれ、二卵性の双子の兄弟がいる。兄弟は一時テレビドラマで彼の代役を務めたこともあったが役者ではない。最近まではファイナンスの仕事をしていた。父親は Stevenage の元サッカー選手で今は IT 関係の仕事をしている。母親は John Lewis の化粧品カウンターで働いている。


しかしながら、ウィショーは全くの典型的なイギリス人というわけでもないようだ。
彼の母親は生粋のイギリス人だが、父方の祖父母はロシア/ドイツとフランス人だという。子ども時代にお祖母ちゃんのいるブルターニュへ行くためにサン・マロへのフェリーの旅を楽しんだ。



家族の誰もが、お祖父ちゃんが亡くなるまで本当の名字が《Whishaw》ではないということを知らず、その時初めて Schtelmachers と Vassilloviches だということがわかった。ベンはそのスペルをどう綴るかさえ確かでないという。


「両親は一度も演技の道に進むことを疑うような素振りを見せたことがありませんでした。どちらも特にアートの世界に興味はありませんでしたが、ぼくは子どもの頃から扮装して役を演じるのが大好きでした。ぼくが三歳頃の写真は、母のドレスや洋服などで変な扮装をして写っているものばかりです。
両親はぼくをヒッチンの青年劇団に入れてくれて、学校では劇ばかりやっていました。将来の職業を選ぶ時点で一度、アートカレッジに行きましたが、途中で止めました。ぼくには向いてないとわかったんです。今は楽しむために絵を描いています」



ウィショーはRADA(王立演劇アカデミー)で演技を学んだ。絶望的な若者を演じることで役どころが確立されてきた。やった仕事の類似性に、ほとんど驚きをもって語る。
Old Vic 劇場でのひょろっとした『ハムレット』、『Brideshead Revisited (邦題)情愛と友情』の映画版で身を持ち崩すセバスチャン・フライト。BBCのドラマ『クリミナル・ジャスティス』では殺人容疑者。『Enduring Love (邦題)Jの悲劇』ではスパッドを演じ、トム・ティクヴァ監督が魅力的に映画化した『パフューム』では主役を演じた。

『パフューム』ではティクヴァ監督と一緒に仕事をするのを本当に楽しんだ。そして、また何か撮るときは何でもいいから出演したいといって、ティクヴァ監督のサスペンス映画『 The International (邦題)ザ・バンク 堕ちた巨像』にほんのちょい役で出た。クライブ・オーウェン扮する主人公のために、ファイルボックスを持って階段を登るシーンのみの出演である。

「まばたきすると見逃しますよ」
と笑う。(実際、私、見逃しました)


米国に進出したいという野望などなかったが、アメリカでのエージェントがついたのは『ハムレット』の成功だった。いずれにせよ何時かはそうなるはずであったろう。ロイヤル・コート劇場で話題になった舞台『The Pride 』のニューヨーク版のため、一月にNYへ行くことになっている。共演はヒュー・ダンシーとアンドレア・ライズボロ。その作品で彼は1950年代のゲイの作家、2008年のセックス常習者を演じる。この二つを合わせると彼の持つ両性的な部分と役との共通性が生まれそうである。

でもその後は?ウィショーは趣向を変えるときがきたと感じる。

「何か違うことをやらなければと思います。コメディとか。観客がぼくのことをちょっと《難しい人》と思ってしまわないように。
Brideshead、パフューム、ブライト・スターとやったので、アメリカで、“文芸物役者というレッテルを貼られる心配はないか”という質問ばかりされました。次の映画ではまたジュリー・テイモア監督の『テンペスト』(ヘレン・ミレンがプロスペラを演じる)のアリエル役をやるのでなおさらです。
多分『Cock 』のぼくをみてそれについて言ってはくれないでしょうから・・・」


そう言いながら微笑む彼を見ると、カンピオン監督のいう《美しい猫》という描写がどこから来ているかまさにわかったような気がした。そう、この特別な生き物は、ミルクの一滴を飲むにさえばか正直なほどにひたむきなのである。

「彼に幸運を!」と、ただただ思った。

Bright Star is released on 6 November; Cock opens at the Royal Court
on 13 November.


(了)


記事サイト ↓
www.spectator.co.uk
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by uraracat | 2010-09-25 23:13 | ベスト10インタビュー 翻訳 | Trackback | Comments(0)

ベン・ウィショー Daily Mail の 記事 訳

Hamlet, Keith Richards, now poet John Keats...
Ben Whishaw on why it's tough to take the lead
 

24th October 2009  By Jon Wilde

Considered the finest British actor of his generation, just how
far is Ben Whishaw prepared to push himself to fulfil his dream? To the edge of sanity?
イギリスで同年代きっての俳優として、自身の夢の実現のため彼はどのようにもがいているのだろうか?狂気ぎりぎりのところで?


d0160581_14424533.jpg「演じることだけが、ぼくがずっとやろうとしてきたことです」

いま、そのスターとしての道を歩き出したベン・ウィショーは語る。

彼にとって、もし役者になっていなかったら、どうなっていたか想像するのは拷問のようなものだ。

「5歳くらいの頃だったと思います。ぼくは実際に自分に一通の手紙を書きました。それは「大きくなったらきみは役者になるんだ」みたいな文面です。他に何も疑問の余地はありませんでした。演じることだけがぼくがやろうとしていたことです。それは3歳の頃からわかっていました。
最近、母と一緒に家族のアルバムの写真を見ました。どの一枚をとってもぼくはすべて何かの扮装をして、すぐにでも演じる格好をしていました」



「ロアルド・ダ―ルの物語を演じたり、オリバー・ツイストのフェイギン役の扮装をしたのを覚えています。ある年のクリスマスの日、黒い人をやりたいと思ったことは鮮明です。父が買ってくれた聖誕セットの中にひとつ、黒人の王様の人形があったのです。これぞぼくがやるべき役だ。それで父がぼくの顔にココア・パウダーを塗りこんだり、バスタオルで頭をターバンのように巻きました。ぼくはもう、役そのものでした」


ウィショーの確たる信念は願ってもない形で実現した。彼は今、イギリス若手中、最も才能ある役者として広く知られるようになった。彼の中で育まれてきたものは、2004年、とても鮮烈に輝きを放つことになる。23歳にしてOld Vic シアター史上、最年少のハムレットとして主演。トレヴァー・ナンの演出のもと、その生き生きとしてエネルギーに満ちた演技は賞賛を浴び、ローレンス・オリヴィエ、ジョン・ギールガッドやリチャード・バートンと比較されるほどであった。

その後は、運命的、破滅的な役が定番となりつつあり、チェーホフの舞台 かもめのコンスタンチン、大ヒットとなったテレビドラマ クリミナル・ジャスティスではBAFTA(英国アカデミー)賞ノミネート、RTS(王立テレビ協会)賞主演男優賞を受賞。
アイム・ノット・ゼアで ボブ・ディラン、 ブライアン・ジョーンズ ストーンズから消えた男で キース・リチャーズ、パフューム ある人殺しの物語で 殺人鬼グルヌイユ、そして
情愛と友情 Brideshead Revisited
で身を持ちくずす若き貴族 セバスチャン・フライトをみごとに演じた。

最近では、ジェーン・カンピオン監督の壮麗な映画 ブライト・スター いちばん美しい恋の詩 で、詩人ジョン・キーツを抑えた演技で好演。この映画はキーツが25歳で結核で亡くなるまでの間の、隣部屋に住む女性ファニー・ブローン(アビー・コーニッシュ)との恋愛を描いた作品である。


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映画公開前から、早くもウィショーはオスカー候補の声さえ上がっている。さて、この若き俳優は本当に英国式演技の偉大な先人たちに続くのだろうか?彼の演技はどちらかというと、ギールガッドやオリヴィエというよりロバート・デ・ニーロやマーロン・ブランドが好んだ一気に集中するメソッド演技に近いような気もする。

いつものことながら役柄にかなり深く入り込む。それは彼の日常の健康と精神衛生を脅かすほどのものだ。舞台『ハムレット』の稽古は毎日10時間マラソンに参加しているようなもので、それが週5日間続く。まさに神経衰弱ぎりぎりの瀬戸際。それにもまして痛ましかったのは、ドラマ『クリミナル・ジャスティス』で殺人容疑者ベン・クルターを演じたときであろう。

「あの中で主人公自身、彼が生きながら地獄を味わっていると感じます―そして、それはぼくにとって、そのままあのドラマの撮影自体に感じたことなのです」

「ぼくはあの経験によってずたずたになりました。刑務所のシーンはバラックで撮りましたが、本当にひどい所でした。冬の最中の撮影で、凍えるほど寒かった。
ぼくが タール・アンド・フェザー(ベタベタのタール状のものを体に塗られ羽根をくっつけられてかつぎまわされる一種の私刑)をされたり、残忍な暴力を受けたり、ヘロインを打たれるシーンがあります。あれはもう本当に過激な罰のようなものでした。
ぼくは自分自身を本当に具合が悪くなる次元にまで追い込みましたが、それは到底良いことではありません。とにかく全てが信じられないくらい生々しかった」



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「常に深く内奥に自分自身を投入する必要がありました。それは体の中から全ての苦悩を総動員するほど、ぼく自身努力しなければならなかった。これは生き方としてハード過ぎます」

新作『ブライト・スター』は、彼が役者として画期的な突破口を見出す作品になったようだ。まるで拷問のようで、健康を害する恐れまである役作りをしなくても、不遇のロマンティック詩人を演じることができるのだということがわかったのである。


d0160581_1758711.jpg映画のため彼は、キーツの親友チャールズ・アーミテージ・ブラウンを演じる共演のポール・シュナイダーと一緒に2週間ばかり湖水地方に旅行に出かけた。

「ああいった小旅行をすることはぼくにとって新しいアプローチの方法でした。いつもは役作りは基本的に一人でしていました。役に入るにしたがってどんどん不安が増してきたものですが。今回はポールと親密度を増すための試みとして出かけました。これは二人が詩を書くために2週間を過ごすという計画でしたが、ぼくたちはすぐにそれを忘れて、二人で大笑いばかりしていました」


「もしキーツが現代に生まれていたら、多分、ジョイ・ディヴィジョンのイアン・カーティスみたいなシンガーになっていたのではないでしょうか?彼は信じられないほど内向的な人物だったのですぐに思い浮かびます。ぼくも他の人よりもより内向的な人間だと思います。ある時、もっと社会的になった方が楽だと気づきました。それはストレッチのようなものでした。いつもアウトサイダーのようだと感じていましたから」



ウィショーはベッドフォードシャーのクリフトンで育った。彼の母親は化粧品会社で働き、
父親は元Stevenage のセミプロのサッカー選手で、のちにIT関係のマネージャー。
スポーツマンの父親に似ず、小さいときはサッカー場で苦労した。

「いつもやせてガリガリだったので全然だめでした。でも試合にまったくお呼びがかからないというわけでもなかったのです。運動音痴には違いありませんでしたが、走るのは速かったので戦略として、ピッチの周りを走って印象づけるというような小わざは弄していました。そうやってやり過ごしていました」

「自分の人生においてやることは演劇だともう決めていたので、スポーツがだめでも別に支障はありませんでした。子ども時代ほとんどの時間はいろんなことを想像してすごしていました。他の誰ともしっくりはこなかったのですが、演じることだけは自分のものだ、それが道だと感じていました」


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Ben (as Keats) and Abbie Cornish (Keats' lover Franny Brawne) in Bright Star


10代の頃、青年劇団に入り、彼の野望はより鮮明になり、ますます焦点が定まった。

「先生が今でも忘れられないいいアドバイスをしてくれました。“ やりたいと思ったことにはそれが人からどんなにくだらないと思われてもしがみついて、とにかくやってみるんだ ” というものです。ぼくなりに解釈すると、《ちょっと才能があるかなと思うことがあるならば、それが将来どうなるかわからないとしても、恐れずにとにかく挑戦してみる》ということだと」


有名になりつつあるにも関わらず、いわゆる有名人の業界に足を踏み入れる様子はない。『パフューム』のミュンヘンプレミアのレッドカーペットを歩く映像をみたが、彼はほとんどコミカルなくらいに居心地が悪そうだった。


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Ben as the fabulously dissolute Sebastian Flyte in Brideshead Revisited, above with Hayley Atwell as Julia (left) and Matthew Goode as Charles (right)



「あれは、部分的にはパパラッチの目を気にしてのものですが、実は着ていたスーツが他人のものだったということもあるのです。自分のをロンドンに置いてきてしまい、エージェントのを着たんです。ぼくはそれより2サイズも小さかったんです。だから、必要以上に自意識過剰になっちゃって。

またあの時は映画を撮り終えて、やっと公開になるということでほっとしてもいました。初めての主演映画で責任が重くのしかかり、撮影中は本当に具合が悪くなるほどでしたから。朝起きて体が痛くてへたり込んでしまい、ベッドから出られないことが何度かありました。

それでも起きて現場に行って、しかもダスティン・ホフマンのそばで演技しなければなりません。並みの大変さではありませんでした。いちばん最初の共演のシーンはぼくがドアをノックしてダスティンが開けるところでした。ドアが開いたとき、ぼくは完全に舞い上がってしまいました。頭に浮かぶことはただ、“ 今 目の前にいるのはあの 『 卒業 』 のあの人だ ”。あそこのシーンの OK が出るまで何度テイクしたかわかりません」



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Ben & Karoline Herfurth in Perfume: The Story of a Murderer which also starred
Dustin Hoffman



彼は、最近しばらく仕事から遠ざかっていること(1月に『ブライト・スター』を終えてから演技の仕事をしていない)を認める。そのため、“ また働けるのかなあ? ”とパニックになった瞬間もあった。しかし、精神的にもきつかった大役をいくつもこなした後の彼にとってこの休息はかえって良かった。

「普段の生活に向き合うことよりも、演技をしていた方がいつも楽なのです。ぼくが演技をするとき、いつも落ち着きがないということも言われました。でも、ぼく自身学んで、どうにか向き合うことも覚えました。最近、全く演技のことを考えないで音楽を聴いたり、シンプルなことをするのが心地よいということに気がつきました。ダンスも一度ノリ出すとかなりのダンサーですよ。

ぼくは特定のアーティストにかぶれる傾向があります。例えばP.J.ハーヴェイとか。その興味を徹底的に満たしたと思ったら他のものに移ります。次に何が来るとしても、どんなことでもそれにしがみつく用意はできています。そしてただ、それをやるだけです」


'Bright Star' is released on November 6


『ブライト・スター いちばん美しい恋の詩』トレーラー ↓



(了)



Source: dailymail.co.uk
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by uraracat | 2010-09-07 20:25 | ベスト10インタビュー 翻訳 | Trackback | Comments(2)

雑誌 『 Wonderland 』 インタビュー記事 の 訳 Part 2

ダニエル・クレイグの映画に3本も出ていますが、これは偶然ですか、それともお二人は友だちなんですか?デビュー作『トレンチ 塹壕』『レイヤー・ケーキ』『Jの悲劇』

Oh God, 若かったですね、ぼく。ダニエル・クレイグのことは全然知りません。全くの偶然です。彼がぼくのことを覚えてるかどうかもわかりませんね。特に最初の映画ではほとんど会話も交わさなかったのではないでしょうか。ぼくはあの時17歳くらいですごく臆病でシャイでしたから。ぼくからは話しかけませんでした。とにかくおそれ多かった・・・。

『Jの悲劇』のときもですか?

多分ちょっとは話したかなあ・・・(笑)

あなたが演じた役柄は内向的なタイプが多いですね ― 情熱的で、苦悩に満ちて、そしてちょっとTwitchy(落ち着きのない)・・・というか。こういう役が特に好きなのですか?


ウィショーはほんのしばらく困ったような様子を見せて答えに時間をかけた。私の肩越しから遠く一点を見つめる目には何か強いものが浮かぶ。" Yeahhhh"と、もの憂げに答える。そして笑い出したのだがその笑いは乾いている。私が使った'Twitchy’という言葉が、触知的なほどに繊細な彼の気に障ったのだろうか・・・


                          P103
d0160581_17162240.jpgBW:
う~ン。。。そうですね。。。なんというか、人が「あなたはこう」と(決めつけたように)言い始めるのはとても不思議なことです。「自分はこう」と決めつけることはしたくありません。目は外側にはついていないのです。自分自身の内側を見るべきです。
だからぼくは自分をそういう風には見ないのです。したくてそうしてるわけではないですし。。。わかりませんが。

でもほとんどの場合、内省的な傾向を役柄に生かそうとしているのでは?

おっしゃる通りです。人生経験からくる自分自身が感じるものを大切にしています。生きるということに対しての何か普遍的なものです。そして純粋なもの。
ぼくが求めている役は、自分と役柄が何か結婚とも言えるような強い結びつきを持ったもの、それによって何か今までにない大きな発見があるような役です。そして、そう。多分それが内向的でかつ'twitchy'(落ち着きがない)ということになるのでしょう。


ウィショーは取材中他では見せなかったくらい、顔にしわを寄せてかなり大胆に声高に笑う。彼のユーモラスな部分をみて私も一緒に笑った。しかし彼の気持ちを傷つけたのではないか、たったひと言の不用意な言葉で彼の今までのキャリア全てを侮辱する結果になったのではないかと、まだ心配ではあった。

役柄の持つ心の傷みや情熱を、努力しなくても自然に、いとも簡単に体現する。そのことに彼がどれほど長けているかと、いうことが言いたかったのだと説明を試みた。



BW:
(まだ笑いながらも、少し我にかえって)<内向的で落ち着きのない役者>!

気を悪くされました?

いいえ、全く。人がどう捉えているのかよくわかりました。

ご自分のことをかなり繊細な人間だと思いますか?

Yes and No です。もっと繊細だったらいいと思うときもあれば、ちょっと繊細過ぎると思うときもあります。

どういう時に繊細すぎると思うのですか?

う~ん...わかりません。難しい話になってしまいます。

そのことでご自分の仕事が難しくなるということもあるのですか?

仕事で上達しなければならないのは、繊細であるということそのものではありません。そういう特性を役立てることはあるかもしれません。
でも何かがうまく行かないとき、(情けない声で)「Oh fuck it ... 何もかもだめじゃないか、まるで負け犬じゃないか」と思ってしまう場合はあります。
自分で省みるとそれはいいことではありません。「知ったことか、F☆ck it all」(笑)。いいことは考えません。ただ気持ちをやりすごすためのエネルギーに過ぎないのですが、ぼくはすぐにそういうネガティブな領域に入り込んでしまうのです。それは仕事上役に立つことではありません。

そういう状況から抜け出すのは難しいことですか?

いつも抜け出す努力をしています。このところ聖書を読んでいて、今教会についての映画の脚本を書こうとしています。聖書の中に「太陽を汝の怒りの中に沈めるなかれ」というくだりがあります。そのことを考えています。
怒ったり、イライラしたりしてもそれをなるべくやりすごすようにしています。そういう気持ちになってしまっても、あまり長くそれに囚われないように心がけています。

教会についての映画ですか?それは結構なビッグニュースじゃありませんか。

(笑)Yeah。でもまだ本当にやるのかどうか自分でもわかりません。自分がもの書きだとは思えないので ... 。実際にはまったく書けません。ただどうしても伝えたいストーリーがひとつあるのですが、それを本当に書くためにには助けが必要です。

宗教というのはあなたにとって今までも重要なことだったのですか?

いいえ。ただ興味はあります。目に見えることを超えた信念のようなものを持つことには興味があります。

実際にそれを持っているのですか?

ええ、そう思います。でも何か特定の宗教を信仰する気にはなれません。

昨今では、<有名になるということ>が宗教にとって変わりました。あなたはそれについてどう思われますか?

考えたことがありません。そういうことは自分には起きない、とどこかで確信しているようなところがあります。

役者の方はよくそれをおっしゃいます・・・

本当ですか?Well ...
ぼくはとにかくそういうこととは無縁のところで生きています。
もし人に呼び止められたとします。それは本当に喜ばしいことです。何らかの形で感動してくれたり、何かのインパクトを感じてくれたからだと思うから。なんとLovely なことでしょう。それを超える以上の他に何があるというのでしょう。

なぜ役者になろうと思ったのですか?

わかりません。ただいつも扮装して、何かのキャラクターになって、おはなしを作って演じていました。それを本当にずっとやってきている、というだけです。一度アートスクールに通い出しましたが、2,3週間でギブアップしました。そして代わりにドラマスクールに行きました。ぼくにとってそれはとても当たり前なことでした。

RADAに入学する前にすでに2,3の映画には出ていましたね。

はい。でも本当にやりたかったのは舞台です。10代のとき、一番好きだったのが観劇することでしたから。映画はそんなに観なかったし、興味もありませんでした。とにかく演劇に通うこと、舞台俳優を観ることが好きでした。
それがずっとやりたかったことだったので自分が映画に出るようになるとか、すごく好きなんだということがわかって自分でも驚いています。
ここ数年映画の自己教育をする努力をしています。アメリカにエージェントがいるのですが、彼女がロンドンに来たとき「どんな映画が好き」かと訊かれましたが、一本も名まえを挙げられなかったんです。それで「自己教育したほうがいい」と言われ、彼女の言うとおりにしました。今はとても映画が好きです。

どういう映画で自己教育したのですか?まさかマイケル・ベイの映画ではないとは思いますが・・・

No!
タルコフスキーが好きです。ベルイマンも好きです。ジェーン・カンピオン監督にロベール・ブレッソンやジョン・カサヴェテスも教えてもらいました。そしてジム・ジャームッシュも発見したところです。最近の映画にはほとんど興味を覚えません。どのようにタルコフスキーのような芸術家が映画を撮るのかということに好奇心をかき立てられます。

RADAを卒業して直ちに『 Hamlet 』を演じましたね。ハムレットは俳優なら誰でも生涯に一度はやりたい役だと思いますが、あなたはもうすでに演ってしまわれた・・・

あれはカレッジを出て約8ヶ月後のことでした。ナショナル・シアターで熊と魔女を演じていました。それからハムレットに出演が決まりました。

ナショナルの『His Dark Materials 』に出ていたのですか?熊の役で?

(笑)ええ、何役か兼ねていました。ひとつは熊で、ひとつは魔女でした。魔女の一団だったのですが全て女性がやるはずだったのに、人数が足りないということになってやせっぽちだった ― 今もそうですが ― 僕が引っ張り出されました。

楽しみましたか?

今までで一番恥ずかしい経験の一つです。今でも本当にやったなんて信じがたいです。他にも何人か男性が引っ張り出されましたが、見かけがあまりにも男っぽいということで止めになりました。でもぼくだけは上演期間中ずっとやらされました。

IMDbのリストにアル・パチーノ主演の『ヴェニスの商人』にあなたもクレジットされています。私は一生懸命観たのですが、どうしてもあなたを見つけることができませんでした。

どうしてそういうことになっているのかわかりません。ぼくは『ヴェニスの商人』には出ていません。一度ファンレターをもらって、それに「パフュームとヴェニスの商人での演技がよかった」とありました。Haha!断言します。ぼくは出ていません!


P104
d0160581_16313162.jpgP105 記事
" I WAS NAKED APART FROM A
LTTLE JOCKSTRAP, MY EYEBROWS
WERE SHAVED OFF AND I WAS GIVEN
BREASTS AND ENORMOUS WINGS "















でもあなたは今度ジュリー・テイモア監督のシェイクスピアの『The Tempest』
(『あらし』)でアリエルを演じるのですよね?


そうです。ジュリーは大した興味深い親方(task-master)です。何でも投げかけてきて、何が何でもやらせようとする。アリエルはハーピーに化けるので、ぼくは小さなサポーター以外は裸で、体を黒く塗って、眉を剃って、胸と翼を渡されました。
長ぜりふがあるのですが、ジュリーは「ゆっくりしたテンポにしたいので、2倍の遅さで話せる?」と聞いてくるのです。だからぼくは羽根をぱたぱたさせながら、2倍のテンポで長ぜりふを言わなければならなかったのです。ああいう理不尽なことを言ってくる人はいるものです。でもぼくはそういうのが好きです。あの感覚...「Come on, 何だってできるわよ!できないことなんてないのよ ... 」 


BRIGHT STAR IS OUT NOVEMBER 6


p106,107 JEANS AND BROWN LEATHER BELT BY D&G, COTTON VEST BY MIHARA
YASUHIRO
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(了)




* * * * * * *

若~、よくぞここまでご立派に成長されて・・・
仰っていることもなんと誠実で堂々としたお答えで・・・
凛々しうござりまする ♪
爺は ... 爺は、目がしらが熱うなってまいりました・・・(およよ)


それにしても、『テンペスト』色々とたのしみすぎる~~~☆
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by uraracat | 2010-07-14 12:17 | ベスト10インタビュー 翻訳 | Trackback | Comments(4)